2017年01月22日

シンバイオシス/ビル・エバンス

SYMBIOSIS

ビル・エバンス(p)
エディ・ゴメス(b)
マーティ・モレル(ds)
ヒューバート・ロウズ(fl)
フィル・ウッズ(as)
1974年録音

最近柄にもなく、ジョギングなんぞをしているのだが、すれ違うジョガーがヘッドホンをしているのを見かけて、真似をしてみようと思いついた。
車の通らない裏道を走るので、危なくはないだろう。ちょっとでも身体を動かせば健康に良いだろうし、音楽に集中する時間も増やせる。一石二鳥ではないか。
ぼくのipodは一時代前のずっしりしたタイプなので、ポケットの中に入れて走るとボヨンボヨンしてちょっと走りにくが、そのくらいは我慢しよう。妻が小さいのを持っていたはずなので、借りるのも手だな。

で、実際に聴きながら走ってみて、別の問題に気づいた。

ビル・エバンスって、走りづれええええ。
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2017年01月22日

チェルシー・ブリッジ/アル・ヘイグ

Chelsea Bridge

アル・ヘイグ(p)
ジャミール・ナッサー(b)
ビリー・ヒギンズ(ds)

1975年録音


ジャズというのはやっかいな音楽で、何かしながらぼんやりと聴いていると良さがよくわからない。だが、ライブでもなければ音楽だけに集中する、という機会はなかなかない。手足と目玉が空いている分、ぼくはついつい何かやってしまう。本を読んだり、マンガを見たり、PCをいじったり、プチプチをつぶしたり。
特に耳障りのいい演奏は、BGMとして聴いていると聴けてしまうので、いつまでたっても真価がわからなかったりする。ぼくにとっては、エロール・ガーナー、アーマッド・ジャマル、そしてアル・ヘイグがそういうタイプの演奏者で、ずっと前から聴いていたのに本当に好きになったのは何年も経ってからのことだった。

というわけで、音楽だけに集中できる時間を作ることは、ジャズファンとしてのぼくの長年の課題だ。
以前は夜、寝床の中でヘッドホンで聴いていたのだが、生活パターンを朝方に変更したらやたらと寝付きがよくなって、いつまでたっても1曲めからアルバムが先に進まない。
防水スピーカーや防水ヘッドホンを探してきて風呂の中で、というのを試したらのぼせた。
通勤電車でノイズキャンセリングのヘッドホンというのもしばらくブームだったのだが、通勤中は読書時間としても貴重で、現状本のほうにウエイトが傾いている。

先日電車の中で読みさしの本を読み終わり、次の本の持ち合わせがなかったので、ふと手持ち無沙汰になったことがある。で、思い出して、iPadを取り出して聴いてみたのがアル・ヘイグ。

・・・読書もいいけど、やっぱり音楽も悪くないよな。

通勤時間の行きは読書、帰りは音楽、みたいに調整してみようか。

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2015年09月21日

Deleted Scenes from the Cutting Room Floor/カロ・エメラルド

Deleted Scenes from the Cutting Room Floor
Deleted Scenes from the Cutting Room Floor

カロ・エメラルド(vo)

2011年




なんだろうこの不思議な味。レトロ? ノスタルジー? いや、たぶん違う。その時代のことを若いこの人が知るわけはないし、喜んで聞いている方だって、ほとんどはその頃の音楽なんか知らないのだ。妖しく、怪しく、グラマーで、ノリがよくて、やばくて、かっこいい。そういう音楽がぴったりくるスタイルがあって、それがたまたまかつて、世界を席巻したことがあった、ということなんだろう。

PVはモノクロだったり、昔のギャング映画みたいなノリだったり、明らかに狙った作りをしているけれど、音楽には不思議と「レトロをモダンに蘇らせた」とというしゃらくさい感じがしない。音楽の芯は、何時の時代でもそんなには変わらないということなんだろう。
1920年代の観客と現代のオーディエンスが同じ会場に隣りあわせて、なんの違和感もなくカロ・エメラルドの音楽にノリまくる。そんな楽しい夢を見た。
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2015年01月01日

サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード

サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
Sunday at the Village Vanguard

ビル・エバンス(p)
スコット・ラファロ(b)
ポール・モチアン(ds)

1961年録音


一族郎党が集まるとか、故郷に帰るとか、海外旅行をするとか、そういった用事でもないと正月休みというのは結構しょうもない。フライフィッシングはオフシーズン。ウインタースポーツの趣味はない。寒い上にどこに行っても混むから出かける気にはならないし、店や水族館の類は閉まっている。テレビはもともと見る習慣がないので、どこが面白いんだかよくわからない。ツタヤで借りてきたビデオを観るのも、掘り出した漫画をまとめて読むのも飽きてしまい、結局、部屋でぼんやり音楽を聞いている。用事のない、普段の週末と変らない。正月早々こんなことでいいんだろうか?

あっちを聴いたり、こっちを聴いたりしたあげく、結局落ち着くのはビル・エバンス。わりあい煮詰まったり、余裕がないときでも聴けるし、ヒマを持て余しているときでも聴ける。ようはいつでも聴けるのだ。この人の音楽は、聴く人の感情を大きく揺らしては来ない。優しげでいて、そのくせどこか人ごとみたいによそよそしいところがあって、聞いていると当面の問題をふっと忘れてしまう。つまりはそれが、ぼくがビル・エバンスをしょっちゅう聴く理由の一つなんだろうと思う。まあ、ジャズという音楽は、多かれ少なかれそういう部分があるけれど。

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2014年12月17日

マイ・オンリー・スリル/メロディ・ガルドー

My One & Only Thrill
My One and Only Thrill

メロディ・ガルドー(vo)

2009年録音

サラ・ヴォーンやエラおばさんは「みんな」に向かって歌っているが、この人は「誰か」に向かって歌っている気がする。より秘めやかで、親密で、個人的なメッセージ。受話器の向こうから聞こえてくるような歌。
その一方で、こういう歌はあまりしょっちゅう歌ってはいけない、という気もする。ありがたみが薄れる。ああ、あの声をもう一度聞きたいな、というくらいがいいんじゃないかと個人的には思う。


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2014年12月15日

ネイティブ・ダンサー/ウェイン・ショーター

ネイティヴ・ダンサー
Native Dancer
ウェイン・ショーター(as,ts)
ワグナー・テソ(p)
デビット・アマロ(g)
ジェイ・グレイドン(g)
ハービー・ハンコック(p)
デイブ・マクダニエル(b)
ロバーティンホ・シルバ(ds)
1974年

ジャズを聴き始めたころ、ガイドブックなどを鵜呑みにしてやっぱり聴いておかなくちゃ、と夏休みの宿題を片付けるようなつもりで聴いたアーティストが何人かいる。ウェイン・ショーターはその一人で、70年代の中頃、ジャズの潮目が変わり始めた時に、その一翼を担った人、という認識だったように思う。で、よくわからなくてそのあとずっと敬遠していた。それでも機会があると聴いてはみるのだけれど、どうもぴんと来ないのだ。まあ、それはそれでしょうがない。そのままずいぶん過ぎた。

最近、ウェザー・リポートをまとめて聴いてふと思い出し、久しぶりに聴いてみた。
このアルバムも初めてじゃないはずだが・・・こんなに可愛らしい音楽やる人だっけ? もっと理屈っぽくて小難しくて、ひねくれていた印象があるんだけれど。
ひねくれてたアルバムが素直になるわけはないから、ぼくが歳をとってひねくれて、その分これがすっと入るようになってきたのかもしれない。

こういうの成長って言うのだろうか?

posted by kiwi at 23:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス

2014年08月31日

8:30/ウェザー・リポート

8:30
8:30

ジョー・ザヴィヌル(kb)
ウェイン・ショーター(ts)
ジャコ・パストリアス(b)
ピーター・アースキン(ds)

1978年録音


聴き出すと、途中で止まらなくなる不思議アルバム。ぼくは車の中で聴いていて、終わる前に目的地についてしまったので、そのまま停めた車の中で最後まで聴いていたことがある。そのくせ4人のメンバーがやりたい放題だし、誰かがどこか行っちゃったら誰が連れて帰ってくるのか聴いている方が不安だし、誰がセンターなのか見当がつかないし、ライブとスタジオ録音を脈絡なく組み合わせた変なアルバムだし、どう考えたらいいのか未だによくわからない。ひょっとしたら誰も計算していないのに、たまたまハマったのだろうか? 
だとしたら、それもまた音楽の奇跡の一種なのだろう。

いまふと思ったのだが、ひょっとしたら「誰も計算していないのにたまたまハマっちゃった」のをジャズの用語で「アドリブ」って呼ぶんじゃないだろうか。


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2014年08月30日

虹伝説/高中正義

虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS
THE RAINBOW GOBLINS

高中正義(g)
Masahiro MIYAZAKI(ds)
Akihiko Tanaka(b)
kiyosumi ISHIKAWA(kb)
Koji SATSUMA(sax)

1981年

80年代というのは、こういう時代だったなあ、と「虹伝説」を聴きながら思う。それはもちろん、ぼくにとって、という意味だし、たぶんにノスタルジーや、いい加減な記憶で色付けされていることもわかっている。実際にはそれなりに面倒なこともあったんだろうけれど、細かいことは覚えていないし、追求する理由も特にない。逆に言えば、音楽としてというより、アイコンとしての「虹伝説」に代表される時代だから、まあ、そういう牧歌的な時代だったんだろうな、と変に納得しているだけなのかもしれない。それはぼくがモダン・ジャズに出会うもう少し前のことである。

当時、レコードで精一杯で、元ネタの絵本までは手がまわらなかった。久しぶりにこのアルバムを聴いて、ためしにAmazonを検索したら見つかったので、思わずポチ。数日後にイタリアのひとが描いたという絵本が届き、眺めながら聴く。30年ぶりに謎解きをした気分。当時よりは若干小遣いは多い。おっさんになるのも悪いことばかりではないのである。

当時わからなかった英語のナレーションが、いまもよくわからないのは若干情けないが、その一方で日本人の演奏を日本で日本人が聴くのになんで英語なんだ、とも思う。演奏者の名前も正確にわからないんですけど。

タグ:高中正義
posted by kiwi at 21:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2014年07月30日

ハロー・ハービー/オスカー・ピーターソン

ハロー・ハービー
HELLO HERBIE

オスカー・ピーターソン(p)
ハーブ・エリス(g)
サム・ジョーンズ(b)
ボビー・ドーハム(ds)

1969年録音

渡辺貞夫や日野皓正のCM音楽からジャズに少しずつ近づき始めたぼくが、ジャズとやらを聴いてみようか、と意識し出した頃に出会った1枚。ラッキーだったと思う。テレビで馴染みのポピュラーソングとも、学校の音楽室で聴かされたかつらをかぶったおじさんたちの音楽とも、FMラジオから流れてくる洋楽とも違う方法で、指先やらつま先やら心のどこやらを勝手に動かす音楽があるのか。ふといつもは素通りする路地を曲がってみたら、見たこともない新しい街の真ん中に立っていることに気づいたような気分だった。たしか、オスカー・ピーターソンとの出逢いでもあった。

あれからずいぶん時間が経ち、いろいろなギタリストを知った耳で聞くと、なんかハーブ・エリスの割り切り方がカントリーギターみたいだな、と思ったりもするけれど、でもやっぱりいいなあ、これ。

posted by kiwi at 22:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2014年06月22日

ロシターロード/アーマッド・ジャマル

Rossiter Road
Rossiter Road

アーマッド・ジャマル(p)
ジェームス・カマック(b)
ハーレン・ライリー(ds)

1986年録音

名子役がそのまま大人の名優になるのは難しい。本人が成長するばかりではなく、時代も変わるからだ。セーラー服の美少女も、25歳でセーラー服着たらやっぱり痛い。ボディコン・ワンレンも今やったら浮きそうだ。流行というだけではなく、潮流や文法みたいなものがやっぱりあって、それが底から時代を支えているのだろうと思う。

音楽に同じことが言えるかどうかはまた別の話だが、このアルバムを聴きながらぼくが考えていたのはそういうことだった。50年代のアーマッド・ジャマルと80年代のアーマッド・ジャマル。30年近い時を経て、ジャマルは大きく変わり、変わらない。変わったのは時代の潮流、変わらないのはジャマルという核。柔軟と堅固の不思議なユニゾン。この自由な感覚が癖になる。


2014年06月02日

ベイシー&ズート

Basie & ZootBasie & Zoot

カウント・ベイシー(p)
ズート・シムス(ts)
ジョン・ハード(b)
ルイ・ベルソン(ds)

1975年録音

ヘトヘトに疲れて帰って来て、こわばったワイシャツを脱ぎ捨て、熱い風呂に肩まで浸かった時に思わず、

うーあー

という声が出てしまうことがあるけれど、ああいう感じのアルバム。

ケレンも見栄もこだわりもなく(たぶん)、よーしやるかー、とジャズをやっているだけなんだけれど、これ以上何がいるのだ。思わず指が動き、足が動く。スタジオ録音のはずなんだが、ライブを聞いている気分になる。

「ジャズってどんなの?」と訊かれたときに、例えばこういうの、と聴かせたい一枚。Amazonで見たら893円って書いてあるんだけど、いったいどうしろと?

posted by kiwi at 23:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2014年06月01日

ビル・エバンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ

ビル・エヴァンス・トリオ・ウィズ・シンフォニー・オーケストラ
Bill Evans Trio With Symphony Orchestra

ビル・エバンス(p)
チャック・イスラエル(b)
ラリー・バンカー(ds)
クラウス・オーガマン・オーケストラ

1965年録音

グルメの先輩に連れられて、なんとかという蕎麦の名店に行ったことがある。なんでも東京で店を出していると客が来すぎるので、蕎麦を追求するためにわざわざ山の中に引っ込んでしまったんだそうで、半日かけて車で行ったのである。ああっ、そんなに蕎麦つゆつけるな、薬味入れるな、ぐちゃぐちゃ噛むな、といろいろなことを言われて、ちっともうまくなかった。ぼくは今でも蕎麦の味がわからない。うどん派だ。

ただ、当時、先輩が何を言いたかったのかは、今になってなんとなくわかるようになった。蕎麦の素の味を味わえ、ということだったのだろう。蕎麦はわからないが、本当にうまいうどんは茹でたてを流水で締めて生醤油をぶっかけたのが一番うまいし、うまいパン屋はシンプルなロールパンにバターだけちょっとつけてほおばるのが一番うまい。
一方、うまい鍋焼きうどんやうまいカレーパンにはそれぞれの詩と歌があり、それ自体完成した構造物だ。うまいうどんを使えばうまい鍋焼きうどんができるんだろ、というのはちょっと違うのである。

ぼくはこのアルバムを聴くたびに思うのだが、オーケストラいらなくない?

posted by kiwi at 22:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2014年05月30日

シティ・コネクション/日野皓正

シティ・コネクション
City Connection

日野皓正(tp)
アンソニー・ジャクソン(b)
ハワード・キング(ds)
ジャニス・ペンダヴィス(vo)

1979年録音

これもよく聴いたなあ。ジャケットからレコードを取り出すときの持ち重りと、針を落とす前の胸騒ぎを今も覚えている。これとか、渡辺貞夫の「モーニング・アイランド」、ネイティブ・サンの「サバンナ・ホットライン」あたりが、当時のぼくにとっての「ジャズ」だった。3枚ともテレビCMに使われていた曲が入っているあたりはご愛嬌。

ジャズという音楽への入り方としては悪くなかった、とぼくは今でも思っている。マイルスの「ソー・ホワット」に衝撃を受けて、という人もいるだろうけれど、ぼくはそうではなかった。その代わり、ソー・ホワットに至る道のりを十分楽しんだつもりだ。

そしてソー・ホワットの何やらについてそれなりに味わえるようになった今でも、ぼくはこのアルバムが、楽しい。若かりし頃の音楽的相棒、という贔屓目を割り引いても、傑作だと思うのだ。

今日聴いて、最後のブルー・スマイルズ(ブルー・ミッチェルに捧ぐ)  という曲に気がついた。当時は誰だろうと思っていたが(たぶん)、あのブルー・ミッチェルかあ。気づくまで35年。



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2014年05月24日

シロッコ/パコ・デ・ルシア

Siroco
Siroco

パコ・デ・ルシア(g)
ルーベン・ダンテス(g)
ペペ・デ・ルシア(palmas)

1987年



男の人生には、「うっ、やばい。鼻血出そう」という状況がたまに発生する。腹の底で色々なものの圧力が高まって、出口を探して盛り上がってくる不穏な気配。メーターが振りきって安全弁が飛んだら、若干みっともないことになるんじゃないか、という予感。いくつか想定できるその危険なシチュエーションの中に、パコ・デ・ルシアを大音量で浴びるように聴く、というパターンを入れていい、とぼくは思う。
フラメンコというのはつまり、その無方向な鼻血エネルギーを制御しきって、ひとつの音楽として昇華する、見事な方法論なのだ。

そういう音楽なんだから、当然、パコ・デ・ルシアは青筋立ててしゃかりきに演奏していると思っていたのに、Youtubeで見たのは、涼しい顔でギターを奏でる、ハンサムな死神博士だった。そのギャップにびっくりして、これは一度この目で見ないと、と考えたものだ。

その機会に恵まれないまま、パコ・デ・ルシアは旅行先のメキシコで急に亡くなった。
ギター・レジェンド、逝く。66歳。

せめて、彼の音楽を聴いて、思う存分鼻血を出そうと思う。

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2014年05月24日

ヤロン・ヘルマン・デビュー

ヤロン・ヘルマン・デビュー
Variations

ヤロン・ヘルマン(p)

2006年

一部ではキース・ジャレットっぽいと言われているらしいけれど、キース・ジャレットっぽいピアノを聴きたいなら、キース・ジャレットを聴けばいいと思う。
あえて比較をするならば、キース・ジャレットほど高踏的ではなく、ちょっとこじんまりとしていて、変にキレたりせず、より可愛げがあり、ピアノはむちゃくちゃ上手いというわけではなく、ちょっと思い込みの強いところがあって、わりと何を考えているかわかりやすい。要は別人だよなやっぱり。

春から夏への季節の変わり目、金曜日の深夜に、夜風に吹かれながら聴くのもなかなかだったが、本当は晩秋の夜更けに、ドテラ着て濃い緑茶をふーふーしながら聴くとより雰囲気が出るのではないかと思った。

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2014年05月21日

スペイン/ミシェル・カミロ &トマティート

Spain
Spain

ミシェル・カミロ(p)
トマティート(g)

1999年録音

 近所にこってり系のラーメン屋さんがあって、腹ペコで帰って来た金曜日の夜などに、ときどき行くのを愉しみにしていた。ぼくとこってりラーメンの蜜月時代は何年も続いたが、ある日、いつものラーメンをたらふく食った夜中に、気持ち悪くなったことがあった。妻はラーメンの後に、揚小丸を半袋分食べたりするからだ、と主張していたが、そうではない。今までその程度のことで気持ち悪くなったりはしなかったからだ。

 ぼくの、こってりラーメンが必要な時代が終わったのだ。

 ミシェル・カミロの超絶ピアノをまとめて聞くと、あのラーメンのことを思い出す。こういう正面切って挑んでくる高密度の音楽は、受け止めるにもそれなりのスタミナが必要だ。もっと若い頃に出会っていたら、喜んでおかわりをしただろう。今は数曲を集中して聴くのがちょうどいい。

 ぼくも歳をとったなあ。
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2014年05月18日

処女航海/ハービー・ハンコック

処女航海
Maiden Voyage

ハービー・ハンコック(p)
ジョージ・コールマン(ts)
フレディ・ハバード(tp)
ロン・カーター(b)
トニー・ウィリアムス(ds)

1965年録音

 ずいぶん前、チック・コリアにはまっていた頃、並んでしょっちゅう名前が出てくるのがハービー・ハンコックだった。当然、折にふれて聴いてみるのだが、どうもピンとこない。マイルスの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」で鳥肌ものの演奏を見せるかと思えば、「ヘッドハンターズ」も演る。VOSPも率いてみせる。なんだかぬるぬると正体が掴めない。ただの器用な人なんじゃないかという気もしてくる。その印象は今もあまり変わらない。ずいぶん聴いてはみたけれど、結局好きにはなれなかった大物のひとりだ。

ただ一曲「処女航海」。これだけが耳から離れない。このアルバムも、アルバムとしてはあまり聴かないけれど、冒頭「処女航海」だけは繰り返し聴く。フレーズが印象的で耳に落ちやすい、という部分は確かにある。でもそれだけではないような気がするのだ。

新しいものを思いついて試してみるとき、そこには何か、計算外の勢いみたいなものが生まれることがある。これ、ひょっとしたらイケてるんじゃないか、みたいな作り手側の子供じみた高揚感。乱暴だったり、やぶれかぶれだったりすることも少なくないが、そのはみ出しているところが面白い。
もちろんこの曲はやぶれかぶれでも乱暴でもない。だがその向こうに、才人ハービー・ハンコックの意図しない「パンチラ」がちらりと見えちゃった気がするのだ。あっ、白!

・・・我ながら気持ち悪い比喩だ。

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2014年03月09日

グランド・エンカウンター/ジョン・ルイス

グランド・エンカウンターGrand Encounter

ジョン・ルイス(p)
ビル・パーキンス(ts)
ジム・ホール(g)
パーシー・ヒース(b)
チコ・ハミルトン(ds)

1956年録音


最近、このアルバムにはまってしまって、繰り返し聴いている。買ったのはいつだったか覚えていないくらい昔のことで、当時はそれほど面白いとは思わなかったはずなのに、不思議なものだ。

音楽が変わるわけはないから、変わったのはこちらである。精神状態や、体力や、ものの見方や、音楽を聞く耳が長い歳月をかけて少しずつ変わっていき、ある日ふと、ぴったりはまる日がやってくる。昔、微妙に合わなくてしまいこんでいた服を羽織ってみたら、体型や趣味が変わっていてぴったりになっていた、といったようなものだ。

たぶん、人にはそれが似合うタイミングや時期といったものがあるのだろう。ぼくはこのアルバムを聴けるようになるまでにずいぶんかかったけれど、たぶん今がその時期だということなのだ。

ぼくはいずれサイドカー付のバイクを買って、ゴーグルと白いマフラーを身につけ、サイドカーに妻を乗せて、湘南の海沿いの道を走ってみたいと思っているのだが、それは今ではない。もっとずっと歳をとって、やぎみたいに伸ばした白髪のあごひげを手に入れてからだ。つまりはそういうことである。
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2013年12月23日

アローン・トゥゲザー/ジム・ホール&ロン・カーター

Alone TogetherAlone Together

ジム・ホール(g)
ロン・カーター(b)

1972年録音

「アランフェス協奏曲」にしても、「アンダーカレント」「アローン・トゥゲザー」にしても、「ジム・ホールのアルバム」という感じがしない。演奏者の多いアランフェスはともかく、じゃあ「アンダーカレント」はビル・エバンスの、「アローン・トゥゲザー」はロン・カーターのアルバムなのか、と言われると、そういうわけでもない。ビル・エバンス&ジム・ホールの、ジム・ホール&ロン・カーターのアルバムだとして言いようがない。
演奏も名前も地味な、根っからの伴奏者。ジム・ホール。

囲炉裏のまわりで訥々と昔話を語っているみたいなこのアルバムを久しぶりに聴いて、ふと、ジム・ホールがみんなに聴かせたかったのは「ジム・ホール」ではなくて、「ミュージック」だったのではないか、と思った。昔話を語る人の名前は残らず、語られた昔話が何年も、何十年も人々の間に残っていく。ジム・ホールの音楽はそういうものだったのではないか。
ねえ、そうだったんですよね? ジム。
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2013年12月07日

煙が目にしみる/エディ・ヒギンズ&スコット・ハミルトン

煙が目にしみる
SMOKE GETS IN YOUR EYES

エディ・ヒギンズ(p)
スコット・ハミルトン(ts)
スティーブ・ギルモア(b)
ビル・グッドウィン(ds)

2001年録音

仕事の相棒とか、ルームメイトとか、漫才の相方とか、なんでもいいのだけれど、ある程度の期間それなりに濃い付き合いをすることになる相手を、自分で選べることになったとする。でもあらかじめ相手に会うことはできず、知らされる情報は相手の好きなアルバムのみ、ということになったとしたら、どうすべきか。
たとえばマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」を挙げた相手は若干やばいのではないか。
チェット・ベイカーの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はちょっと頼りなくないか。
コルトレーンの「至上の愛」の人は説教を始めるのではないか。
アーネット・コブの「チタリン・シャウト」は勢いはあるけれど乱暴者なのでないか。

というバカなことを考えたのは、エディ・ヒギンズとスコット・ハミルトンの組んだこのアルバムを挙げたひとなら、そう大外しはしないのではないかという気がしたからだ。人柄は穏当で、会社や学校にちゃんと通っており、どういう相手とも(クラシックやパンクの人とも)気軽に世間話ができるだろう。近所の評判もよく、年賀状なんかもマメに出している。少なくとも表向きは、変態的な深みにハマっていることもなさそうだ。かといって俗物というわけではなく、無二の親友になれるかどうかはまた別の話だが、お見合いならば、まずは会ってみて、というところまではトントン拍子に話が進みそうだ。

ぼくの知り合いにも何人かそういうタイプの人がいるけれど、それはけっこう偉大なことだよなあ、と思う。


posted by kiwi at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ