2007年09月29日

オパス・デ・ジャズ/ミルト・ジャクソン


オパス・デ・ジャズ
Opus de Jazz

ミルト・ジャクソン(vib)
フランク・ウェス(fl)
ハンク・ジョーンズ(p)
エディ・ジョーンズ(b)
ケニー・クラーク(ds)

1955年録音


 ぼくはこのアルバムを聴くたびに、やっぱりメシは炊きたてご飯に鰺のひらき、みそ汁にたくあんだよなあ、と思う。見かけがずばぬけて印象的なわけではなく、とりわけ変わった味がするわけでもないけれど、いや、だからこそ、スタンダードは何度食っても飽きないし、何度食っても旨いのだ。

 曲目がスタンダード集、というわけではない。ヴァイブとフルートがリードするコンボがありがち、というわけでもない。そうではなくて、ほら、ジャズそのものでしょう? この香り、この雰囲気。

 ヴァイブとフルートの柔らかいハーモニーがとっても気色よいが、それを後ろでしっかりと支えているような支えていないような、ハンク・ジョーンズのなんだかすっとぼけたピアノが大好きだ。
posted by kiwi at 22:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヴァイブ

2007年09月26日

直立猿人/チャールズ・ミンガス


Pithecanthropus Erectus (Dig)
Pithecanthropus Erectus

チャールズ・ミンガス(b)
ジャッキー・マクリーン(as)
J.R.モンテローズ(ts)
マル・ウォルドロン(p)
ウィリー・ジョーンズ(ds)

1956年録音


 ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリが組んだ「アンダルシアの犬」という短編映画がある。素っ頓狂なイメージが連続するへんな映画だ。たとえば。

 背の高い男が道の真ん中につったって、じっと自分の手のひらを見ている。傍らからのぞき込んでみると、手の平に穴が開いていて、そこから大きな黒い蟻が出たり入ったりしている。
 それから男はいきなり車に轢かれてしまう。


 ぼくはこの映画をケケケと笑いながら観ていたのだが(オールナイトの疲れでハイになっていたのかもしれない)、ふと気づくと回りは誰も笑っていなくて、ちょっとぞっとした記憶がある。


 このアルバムを聴いて、ふとそんなことを思い出した。
 本来は眉間にしかるべきシワなど寄せつつ、哲学的な思考をめぐらしつつ、腕組みして聴くべき名盤なのかもしれない。が、ぼくにとってはなんだか笑っちゃう、愉快なアルバムなのだ。何やってんだろなあ、という感じで。
 

 チャールズ・ミンガスのベースってのは、音に質量があっていいな。宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」にヤマネ(だっけ?)の子どもをセロに入れてゴウゴウ弾くと、その振動で身体が温まって元気になる、という話が出てくるけれど、ゴーシュが忙しいときはヤマネの子どもはミンガスのベースに入れてもらうといいと思う。
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2007年09月23日

ニューヨーク・コンチェルト/増尾好秋


ニューヨーク・コンチェルト(紙ジャケット仕様)
NEWYORK CONCERTO

増尾好秋(g)
ジョー・チェンバース(ds,vib)
ソニー・フォーチュン(as,fl)
ケニー・バロン(p)
エディ・ゴメス(b)
レイ・マンティラ(perc)

1981年録音


 勉強もスポーツもそこそこできて、ルックスも70点くらい、ひとあたりがよく誰からも好意を持たれ、友達が多くてそれも優等生タイプからちょい悪系(?)まで幅広い、というタイプがクラスにひとりくらいいなかっただろうか?
 たぶん、増尾好秋はそういうタイプだ。


 もちろんそれは悪いことじゃないし、クラスでは人気者になるに違いないが、残念ながらジャズの世界ではいまひとつ目立たない。スイカに塩が必要なように、ジャズという音楽にはどこかしら、苦みのようなもの、陰の区画、間の抜けた部分が必要なのではないかと思うことがある。


 増尾好秋のギターからは、普段はそうした要素はあまり感じないのだけれど、このアルバムは例外だ。一曲一曲はそれなりにキャッチーで、リラックスしていて、いつものようにチャーミングなのだが、その一方でどことなくアンバランスで、ちょっと危ない感じがする。そのとんがった部分がひっかかって、繰り返し聴いても飽きないのだ。ひょっとしたら、けがの功名なのかも知れないけれど。


 15分を超える「アランフェス協奏曲」ではいつも涼しい顔の優等生、増尾好秋が、ギター弾きの意地を見せる。それはもちろん、増尾好秋的ではあるけれど、ひとつのほむらの形であることは確かだ。
posted by kiwi at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2007年09月13日

WOW/大西順子


WOW
WOW

大西順子(p)
嶋友行(b)
原大力(ds)

1993年録音


 たらふく飯を喰う、という経験をここしばらくしていない。ダイエット中なのだ。
 それでなくても、たらふく行為にどことなく罪の意識のようなものを感じる。きっとエコロジーやらロハスやらがもてはやされる世の風潮に、ぼくも知らず知らずのうちに流されているのだろう。嘆かわしい。
 だが、人間の身体と心は、本来たらふくを求めるようにできている。自分ではそうは思わなくても、我慢をしているのだ。おかわりを断るごとに、心の中には少しずつ澱のようなものがたまっていく。
 で、なんかの拍子に爆発して、馬鹿食いをしたりするのだ。


 このアルバムを聴いて感じる爽快感は、別の言葉で表現すると「たらふく感」「たんまり感」というのが一番近い。ジャズ・ピアノをいっぱい聴きてえなあ、という飢えには、とってもよく効く。楊枝をくわえて満足そうに腹を叩いているオヤジ、というのを時々みかけるが、このアルバムを聴きおえたときのぼくはちょうどそんな風に見えるだろう。
 オリジナルから、デューク・エリントン、セロニアス・モンクまで。トリオでばりばり弾き倒すこの豪勢。



 おかわり!
posted by kiwi at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(3) | ピアノ

2007年09月09日

ヘヴィ・ウェザー/ウェザー・リポート


ヘヴィー・ウェザー
Heavy Weather

ウェザー・リポート

ジョー・ザヴィヌル(syn)
ウェイン・ショーター(ts,ss)
ジャコ・パストリアス(b)
アレックス・アクーニャ(ds)
マノロ・バドレナ(perc)

1976年録音


 台風一過の秋晴れの下で、「ヘヴィ・ウェザー」というタイトルのアルバムを聴くのもまた一興、と思って引っ張り出してみたら、これがけっこう、雰囲気にあうのでちょっとびっくりした。青空を流れる雲や、まだ強いが雰囲気の変わり始めた日差しや、夏と秋のブレンド状態になっている台風の名残風に、ウェザー・リポートの中でも特に元気で、マジカルで、カラフルで、さわやかなこの1枚がなかなかにぴったりくる。こういうのはうれしい。

 虹がぎっしりつまっているビール缶があったとしよう。
 キンキンに冷えたそいつをがしゃがしゃと振り回して、天に向けて一気にプルトップを引っぺがすと何が起きるか。

 その光景をレコードに収めると、このアルバムになる。
posted by kiwi at 16:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | コンボ・グループ

2007年09月06日

ダイナ・ワシントン・ウィズ・クリフォード・ブラウン


ダイナ・ワシントン・ウィズ・クリフォード・ブラウン
Dinah Jams

ダイナ・ワシントン(vo)
クリフォード・ブラウン(tp)
クラーク・テリー(tp)
メイナード・ファーガソン(tp)
ハーブ・ゲラー(as)
ハロルド・ランド(ts)
リッチー・パウエル(p)
ジュニア・マンス(p)
ジョージ・モロウ(b)
マックス・ローチ(ds)

1954年録音


 台風接近中。こんな夜には何を聴こうか。
 アート・ブレイキーで迎撃、とも思ったのだが、水平に飛んでくる雨粒がわが家のぼろい外壁で砕ける音と、ブレイキーのナイアガラ・ロールの区別がつかなくなりそうな気がする。で、選んだのがこれ。筋肉もりもりのダイナ・ワシントンのボーカルと、メイナード・ファーガソンの超高音トランペットなら嵐にも負けない。

 クリフォード・ブラウンが54年に女性ボーカルと競演した3枚の1枚だ。ほかの2人はヘレン・ミレルサラ・ヴォーン。3枚とも傑作揃い、しかも全然雰囲気が違うので、3枚並べて聴いてもおなかいっぱいにならない。
 ただし、このアルバムはトランペットだけで3人もいる豪華ジャム・セッションで、クリフォード・ブラウンをじっくり聴きたいならほかにいいアルバムがいっぱいある。こういうあざといアルバム・タイトルの付け方はよくない。


 彼らを向こうに回して一歩も引かないダイナ・ワシントンがすんごい。声に質量を感じる、女性ボーカル界のパワー・ファイターだ。じっくりバラッドを歌い上げてもパワーは隠しようがない。最高時速300kmのスポーツカーが50kmくらいで巡航しつつ、すっと後ろについた感じがして、ちょっと身の危険を感じる。


 窓の外もなんだかみなぎってきた。
posted by kiwi at 23:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | ボーカル

2007年09月04日

ゲッツ/ジルベルト


ゲッツ/ジルベルト
Getz/Gilberto

スタン・ゲッツ(ts)
ジョアン・ジルベルト(vo、g)
アストラッド・ジルベルト(vo)
アントニオ・カルロス・ジョビン(p)
トミー・ウィリアムス(b)
ミルトン・バナナ(ds)

1963年録音



 言葉には役割がある。
 たとえばフランス語は、口喧嘩には向いていない。戦闘用語としてはドイツ語やロシア語や広島弁に数段劣る。その代わりに女の子を口説くには実力を発揮するだろう。イタリア語はオペラには最適だが、あの勢いで江戸前落語をやられたらワビもサビもあるまい。


 で、やっぱりボサノバは、ポルトガル語がいい。
 あの柔らかい、つぶやくようなポルトガル語がいい。
 ぼくはポルトガル語はおはようも言えないけれど、歌詞を覚えてしまった。


 おーりゃきくいざましぇりんだんまいしぇでぃげらっさ・・・


 このアルバムの中で、スタン・ゲッツがどんな役割を果たしているのか考えることがよくある。テナーがいないほうが、アルバムとしてのまとまりはよいような気がしてならないのだ。実際、「イパネマの娘」はスタン・ゲッツのソロが入ってくると、微妙に風景が変わる。違和感があるわけではない。スタン・ゲッツの柔らかい音色は、ボサノバとポルトガル語のように、この音楽の中でぴたりとはまる。だが、仲の良い家族の中に、礼儀正しく親しみ深いが知らない男がひとりまざったみたいに、少しだけ空気が変わる。あ、鼻はほじれないな、屁をこくわけにはいかないな、といったふうに。
 あ、それがスタン・ゲッツの役割なのか。



 たぶんその風景の変わりぐあいが、このアルバムが半世紀近く聴きつがれてきた理由なんだろうな、とぼくは思う。
posted by kiwi at 23:46 | Comment(2) | TrackBack(0) | サックス

2007年09月02日

サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン


サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン+1
Sarah Vaughan with Clifford Brown

サラ・ヴォーン(vo)
クリフォード・ブラウン(tp)
ハービー・マン(fl)
ポール・クィニシェット(ts)
ジミー・ジョーンズ(p)
ジョー・ベンジャミン(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

1954年録音


 
 ジャズって、安いなあ、とつくづく思う。
 
 大歌手、サラ・ヴォーンの代表作のひとつで、しかもサポートするのがクリフォード・ブラウンというこのアルバムがAmazonで1670円だった。こういうアルバムは噛めば噛むほど味が出るので、数十年にわたって何百回と繰り返し聴くことになるのである。1回あたりの金額に換算したらホント、申し訳ないくらいだ。


 せめて斎戒沐浴して身を清め、白装束に身を固め、スピーカーの前に正座して、全身全霊をもって聴かせていただこうと思う。
 が、何事にも予習復習は必要なので、通勤電車の行き帰りや、車の運転中にも聴かせていただこうと思う。
 夜、寝床の中で聴いたり、本を読みながら聴いたり、ブログを書きながら聴いたりもさせていただこうと思う。
 たまにそのまま寝こけたりもするが、寝こけて聴きのがした分はまた翌日聴かせていただこうと思う。


 ところで、「ウィズ・クリフォード・ブラウン」というアルバム名はちょっと不公平だと思う。クリフォード・ブラウンが悪いのではもちろんなくて、ほかのメンバーも頑張っているからだ。特にテナーのポール・クィニシェットというひとと、ピアノのジミー・ジョーンズがとってもよい。
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2007年09月01日

エクステンションズ/マンハッタン・トランスファー


Extensions
Extensions

マンハッタン・トランスファー

アラン・ポール(vo)
ティム・ハウザー(vo)
ジャニス・シーゲル(vo)
シェリル・ペンティン(vo)

1979年録音


 マンハッタン・トランスファーの豪勢、かつ、かっこいいコーラスは、聴くたびに、なんだ、ジャズってのはこれで必要十分なんじゃないか、と、思わせる部分があって、それはある意味とっても危険だ。燦々たる陽光の下では、逆に何もかも白々と色あせるという一面もあるからである。

 とはいっても、でっかい氷のかたまりが木っ端みじんに砕け散るみたいな、あるいは年代物の水虫を力まかせにかきむしるような、このゴージャズな爽快感は、くせになる。くせにならずにはいられない。
 やむを得ずに聴くときには、できるだけでっかい音で(深夜はヘッドホンでも使って)力任せに聴きたい。毒を食らわば皿まで、と言うではないか。
posted by kiwi at 00:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | ボーカル