2008年02月26日

ポール・ウィナーズ/バーニー・ケッセル


Poll Winners
THE POLL WINNERS

バーニー・ケッセル(g)
レイ・ブラウン(b)
シェリー・マン(ds)

1957年録音


  ギターのバーニー・ケッセル、ベースのレイ・ブラウン、ドラムスがシェリー・マン。1956年のアメリカジャズ界の楽器別人気投票のトップがこの3人らしい。投票を英語でpoll、その勝者だからTHE POLL WINNERSなのだが、ジャケット写真で3人が棒=poleをかかえてはしゃいでいるのは、要はだじゃれ。そういえば昨日紹介したOverseasも、ジャケットにCの字が一杯あって、overC'sというオヤジギャグらしい。誰だこういうこと考えるの。


 ギャグのセンスはともかく、中身はとてもいい。ピアノレスのため音空間に十分な余裕があって、空気に消えていく弦の名残まで聴こえるようだ。三人三様の至芸をゆっくり、しっかり、たっぷり楽しめる。
 それにしても、ジャズにおけるピアノというのは偉大な楽器だ。ピアノだけでも何杯でもおかわりができ、ピアノさえしっかりしていれば、他がヘボでもそれなりには音楽になる。逆にピアノのフレームを外してしまえばもはやごまかしは効かず、素材一本の勝負になる。たとえば悪いがすっぴんのミス・ユニバース大会みたいなものだ。そこで勝つ美女が、本当の美女である。
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2008年02月24日

オーバーシーズ/トミー・フラナガン


Overseas
Overseas

トミー・フラナガン(p)
ウィルバー・リトル(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

1957年録音


 このブログの右下にはミュージシャンの名前がたくさん表示されている。タグクラウドというやつだ。ぼくは紹介したアルバムに参加しているミュージシャンの名前を記事のタグにしているので、名前の大きいひとほど登場回数が多いということになる。
 これがなかなか面白い。アルバムを紹介する機会の多い、ひいきのミュージシャンが大きくなるのはもちろんだが、それ以上に、多くのアルバムに参加している「名脇役」が目立つことになるのだ。レイ・ブラウン、ポール・チェンバース、マックス・ローチ・・・ジャズの屋台骨を支えた名手たちの名前が浮かび上がってくる。


 トミー・フラナガンもまた、そうしたひとたちの一人だ。名サイドマンとして知られ、数多い名盤、名作に参加しているために「名盤請負人」のあだ名があるらしい。名盤請負人なんだから、自分のリーダーアルバムだって名盤である。それは間違いない。
 が、この名盤、どうも聴き方が難しい。何度聴いても、ぼくはスピーディで粋でキレのいい、エルヴィン・ジョーンズのドラムスに気をとられてしまう。あ、いかんいかん、今日はトミー・フラナガンだったんだ、と気を取り直しても、しばらくするとまたエルヴィン・ジョーンズにフォーカスを当てている。何度か試してみて、ええいもういいや、と放り出してしまった。


 ところが、このアルバムの真価に気づいたのはその後だ。いっそエルヴィン・ジョーンズが主役のつもりで聴いていると、ああ、このピアノなかなかいいな、と逆にトミー・フラナガンが気になり出す。で、ふと、ウィルバー・ジョーンズのベースも粋だな、と気が付く。みんなとってもいいじゃないか、すごいすごい、と見直す。そうしてはじめて、このアルバムが持っているポテンシャルみたいなものを再発見するのだ。


 ひょっとするとこれが、トミー・フラナガンが名サイドマン、名盤請負人と呼ばれる理由なんじゃないだろうか。アルバムの中で一種の触媒のように作用して、別のところに灯った明かりを別の灯心に、また別の灯心にとうつしていく。で、いつか彼もその一部である音楽全体を、青白い完全燃焼の炎へと燃え上がらせていく。
 トミー・フラナガン効果とでも呼ぼうか。


 
 
posted by kiwi at 23:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年02月23日

フィーリングス/ミルト・ジャクソン


Milt Jackson & Strings
Milt Jackson and Strings

ミルト・ジャクソン(vib)
レイ・ブラウン(b)
トミー・フラナガン(p)
ヒューバート・ロウズ(fl)


1976年録音



 モダン・ジャズという音楽は、多かれ少なかれ難しい。いつでもどこでもだれとでも、というわけにはいかないし、正直どこがいいのか見当もつかない、という演奏だって珍しくはない。が、音楽と真摯に対峙しさえしていれば、いつかは報われるもので、井戸から水があふれ出すように、その音楽の深いところに潜んでいた汲めども尽きぬ滋養に気が付く日がきっとやってくる。だから努力と修行を厭ってはならない・・・なんてことを考えながら音楽を聴いていると、たまにがくっと膝が砕けるような演奏に出会うことがある。このアルバムなんか、そうだ。


 甘いもの厳禁のダイエットを敢行中に、魔が差して極上のフルーツパフェをたらふく食ってしまったとか、山ごもり千日行の修行僧がなぜかビキニ美女軍団のビーチ・バーベキュー・パーティに巻き込まれてしまったとか、そういう感覚に近いのではないだろうか。うおお、こんなことでいいのか。


 ストリングスとフルートの甘く優しいフレームに彩られつつも、こぼれ落ちてくるのは匂い立つようなジャズのエッセンスで、本当にもう、こういうのは困るのである。
posted by kiwi at 11:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヴァイブ

2008年02月17日

ポートレイト・オブ・ピー・ウィー/ピー・ウィー・ラッセル


Portrait of Pee Wee
A Portrait of Pee Wee

ピー・ウィー・ラッセル(クラリネット)


1958年発売



 ピー・ウィー・ラッセルは顔が長い。


 ビル・クロウという人の書いたジャズのエッセイを読んでいたら、ピー・ウィー・ラッセルは顔も長けりゃ鼻も長い、だいたいからだがひょろひょろ長くて死体みたい、という話がひんぱんに出てくるので、いったいどんだけ長いんだろう、とアルバムを買ってみる気になった。考えてみると音楽を聴いても長さはわからない。たまたまジャケットが似顔絵だったので、顔が長いことだけは確認できた。


 顔が長いせいかどうかはわからないが、ピー・ウィー・ラッセルの演奏もまたひょろひょろとしている。が、ジャズ・クラリネットはベニー・グッドマンの頃から多かれ少なかれひょろひょろしているもので、柔らかくひょろひょろしているのがクラリネットの魅力でもある。ぼくはクラリネットの音色が好きで、モダン・ジャズの世界でももう少しクラリネットの出番が欲しいと思うが、それはそれとして懐かしくなじみ深いフォーマットの中で、クラリネット本来のひょろひょろを愉しむのも悪いことではないと思う。

2008年02月17日

ザ・トリオ Vol.1/ハンプトン・ホーズ


Trio 1
HAMPTON HAWES THE TRIO,VOL.1

ハンプトン・ホーズ (p)
レッド・ミッチェル (b)
チャック・トンプソン (ds)

1955年録音




 音の粒がりゅうと際立って、艶がある。やけどしそうにホットで、しかもしつこくない。まるで極上の炊きたてご飯みたいなピアノだ。こういうご飯はフリカケかけたりオムライスに作ったりしたらもったいない。どん、とドンブリに盛りあげて、味噌汁とタクアンの塩気をたよりにただひたすらにガシガシと食い進むのが一番旨い。いくらでも食べられる。

 
 「ザ・トリオ」と銘打たれたアルバムは3枚あるらしいが、ぼくはそのうちの2枚、VOL.1とVOL.3だけを持っている。VOL.1がよかったのでもう1枚と思ったのだが、VOL.2とVOL.3を並べてみてジャケットの可愛いほうをとりあえず選んだのだ。


 やっぱりVOL.2も買おう。



This Is Hampton Hawes: Vol. 2, The Trio
VOL.2
Vol. 3: The Trio
VOL.3

posted by kiwi at 01:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年02月11日

ビック3/ミルト・ジャクソン


Big 3
The Big 3

ミルト・ジャクソン(vib)
ジョー・パス(g)
レイ・ブラウン(b)

1975年録音



 用心していたのに風邪を引いたらしい。頭痛とのどの痛み。若干熱っぽい。咳はそんなでもないが、鼻がつまって息ができない。こじらせたらやっかいなので、せっかくの連休を温かく、湿った(加湿器で)わが家に閉じこもって暮らす。
 さて、こんな夜には何を聴くべきか。


 体調が悪いのだからさっさと寝ろ、ということなのかもしれないが、普段だって音楽を聴く時間がたっぷりあるわけじゃない。ただ寝ているのはもったない。音楽を聴いて風邪が悪化することもないだろう。
 が、もちろん、なんでもいいわけではない。ドラムはけっこう頭痛に響く。ラッパやサックスもしんどい。ピアノトリオも饒舌なやつは今はちょっと遠慮したい気分だ。かといってただ緩いのじゃつまらない。


 あれやこれや試していて、ぴったりなのを見つけた。ピアノレス、ドラムレス。語り過ぎず、走り過ぎず、かといって黙り込みもせず。ベテラン3人の肩の力が抜けた至芸がじっくり聴ける。ミルト・ジャクソンのヴァイブが上がったり下がったり、柔らかい指圧みたいに鼓膜を刺激する。副作用もなさそうだ。
 これを聴きながら、ふとんに潜って寝るとしよう。
posted by kiwi at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヴァイブ

2008年02月03日

ジャズ・ギター/ウェス・モンゴメリー


Jazz Guitar
jazz guitar

ウェス・モンゴメリー(g)
ハロルド・メイバーン(p)
アーサー・ハーパー(b)
ジミー・ラブレース(ds)

1965年録音


 聞いたことのないアルバムタイトルで(インクレディブル・ジャズ・ギター、は別のアルバム)、ざっと調べた限りでは、ウェス・モンゴメリーのディスコグラフィーにこの名前のアルバムが見あたらない。しかもAmazonでは新品で879円だった。ひょっとしてウェス・モンゴメリーのニセモノが演奏しているのではないかと思いつつ、半信半疑で購入したら、これがスゴいのだった。


 おとなしめで木訥な印象のあったウェス・モンゴメリーがアクセル全開で弾きまくる。録音はあまりよくないが、熱風が吹き出してくるようなアルバムで、その意味ではインクレディブル・・・より凄いかもしれない。肝をつぶして呆然と聴いているとあっという間に終わってしまう。なんなんだこれは。


 いろいろ調べたところでは、どうも1965年のパリでのライブ録音から、さらに何曲か取り出したベスト版らしい。このコンサートの国内版は「ソリチュード」というタイトルで2枚組で出ていたようだが廃盤になっており、あきらめきれずにさらに調べていたら録音日から見て「Complete Live in Paris 1965」というのがどうも同じ録音らしいのだが、どういうわけか「ソリチュード」とは微妙に曲目や曲数が異なっている。ああややこしい。聴いてみればわかるだろう。たぶん。
posted by kiwi at 20:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2008年02月02日

星影のステラ/キース・ジャレット


星影のステラ
STANDARDS LIVE

キース・ジャレット(p)
ゲーリー・ピーコック(b)
ジャック・ディジョネット(ds)

1985年録音



 ぼくは一度だれかが、キース・ジャレットを叱るべきだと思う。


 ジャズを聴き始めたころ、演奏をしながら唸るやつがいる! ということを知って結構ショックを受けた。最初の洗礼はたぶんオスカー・ピーターソンで、それからバド・パウエル、エロール・ガーナー。ヴァイブでもデイブ・パイクが変な声を出す。ライオネル・パンプトンも愉しそうに唸ることがある。
 音楽以外の音がいっこたりとも入ってはイカン、と思っているわけではない。ライブ録音では臨場感が出るし、ライオネル・パンプトンなんかは気持ちよさそうでほほえましい。
 が、それも程度問題だ。


 キース・ジャレットはちょっと桁が違っている。
 ぼくはたまたま、あまり唸らないキースを聴いてきたらしく「なんだ、こんなもんか。バド・パウエルのほうがひどいな」程度に思っていたのである。その意味で、このアルバムは“あたり”だったらしい。もし公園のベンチで隣にこういう人が座ったら、怖い。ぼくだったら逃げる。
 

 このアルバムは好きな人にとっては至高のアルバムらしい。いい演奏である、という点に異議はないが、このアルバムは腑に落ちる前に笑っちゃうか、うるせえよっ! って気分になってしまうのだ。気にならない、という人はどういう聴き方をしているのだろう? コツを教えてもらいたい。

 どうして誰もキース・ジャレットに文句を言わないのだろう。あるいはせめて、もうちょっと上手に唸るコツを教えてやるべきではないだろうか? あるいは、ひょっとしたらこのうなり声がキース・ジャレットの人気の秘訣なのだろうか? そのうち気持よくなるんだろうか? あまりそうはなりたくないのだが。
 あるいはキース・ジャレットは言うのかも知れない。癖でしょうがないんだ、と。しかし貧乏揺すりをするバレリーナは、いくら癖でもやっぱり怒られる。唸らない名ピアニストはいくらでもいる。彼らにできて、キース・ジャレットにできないわけはない。

 やっぱり甘やかしてはいけないと思う。
posted by kiwi at 01:28 | Comment(2) | TrackBack(0) | ピアノ