2008年04月27日

ジャズ・ハズ・ア・センス・オブ・ユーモア/ホレス・シルバー


ジャズ・ハズ・ア・センス・オブ・ユーモア
Jazz Has A Sense Of Humor

ホレス・シルバー(p)
ライアン・カイザー(tp)
ジミー・グリーン(ts,ss)
ジョン・ウェバー(b)
ウィリー・ジョーンズIII(ds)

1998年録音


 ジャズを聴き始めたころ、「ファンキー」という言葉がよくわからなかった。「ヤンキー」(もしくはヤンキィ)の仲間だろうか、いずれにしても「上品でスマート」という意味じゃなさそうだ、と思った。今思えば当たらずとも遠からず。
 その後、アート・ブレイキーやホレス・シルバーに出会って、ファンキーというのはなるほど上品とはほど遠いが楽しい、ということを覚えた。


 このアルバムに関して言えば、このジャケットが全てを語っている。今でも覚えているけれど、秋葉原のレコードセンターのジャズのフロアでエレベータを下りたら正面にこのアルバムが飾ってあって、ひと目で買うことに決めた。こういうセンスのアルバムがつまらん可能性はかなり小さい、と判断したのだ。
 その直感は間違っていなかった。


 人生は単純明快なほうがいい。音楽だってそうだ。
 ジジイになって、こんな風に笑って世の中を振り返られたら、それでぼくの人生オッケーだな。
posted by kiwi at 23:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年04月27日

レフト・アローン/マル・ウォルドロン


レフト・アローン(K2HD/紙ジャケット仕様)
Left Alone

マル・ウォルドロン(p)
ジャッキー・マクリーン(as)
ジュリアン・ユーエル(b)
アル・ドリアーズ(ds)

1960年録音



 マル・ウォルドロンはビリー・ホリディの最後の伴奏者で、このアルバムは彼女に捧げられている。タイトル曲の「レフト・アローン」はビリー・ホリディの詞にマルが曲をつけたものだ。
 まあ、その、確かに人生にはそういう側面があるよなあ、と納得せざるを得ないジャッキー・マクリーンの絶唱の説得力。マル・ウォルドロンの沈み木のように堅く、黒々と、沈み込むピアノ。ぼくはこの一曲を聴くたびになぜか、「昭和枯れすすき」というなんだか凄い古い演歌を思い出す。もちろん音楽としては全然違うのだけれど、根っこのところが似ているような気がするのだ。このアルバムも、マル・ウォルドロンも、日本で高い人気を誇るそうだが、わかるような気がする。

 なお、ジャッキー・マクリーンの参加はレフト・アローン1曲だけで、あとはトリオの演奏だ。タイトル曲があまりに有名で、他は無視されがちだが、実はけっこう聴き応えがあって、ぼくは好きだ。

 はじめてこのアルバムを聴いた日、レコードをターンテーブルに載せて、ぼくはベットにひっくり返ってライナーノーツを読んでいたらいつの間にか眠ってしまい、ふと気づくと部屋は真っ暗で、何か聞こえると思ったら、おっさんの低い声がぼそぼそと、いつまでも聞こえる。念仏みたいで何を言っているのか分からない。ぞっとして一瞬で目が醒めたのだけれど、アルバムの最後にマル・ウォルドロンが語るビリー・ホリディの思い出話が録音されているのだった。

 怖かった。
posted by kiwi at 02:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年04月27日

ブルースの真実/オリバー・ネルソン


Blues & The Abstract Truth (Reis) (Rstr)
The Blues and the Abstract Truth

オリバー・ネルソン(as,ts)
エリック・ドルフィー(as,fl)
フレディ・ハバード(tp)
ビル・エバンス(p)
ポール・チェンバース(b)
ロイ・ヘインズ(ds)


1961年録音

 たまにブルースの日、というのがあって、今日は一日このアルバムを繰り返し聴いていた。ブルーだからブルース、というわけでは全然ない(だいたいブルースは憂鬱な曲、というわけではない。それは淡谷のり子の聴きすぎ)。ぼくはどちらかというと余裕な気分のときに、ブルースを聴きたくなる。その黒っぽいごつごつしたエネルギーを消化するには、こちらにもそれなりの体力がいる。よっしゃ今日はひとつブルースでも聴いてみるかな、という気分になるには、多少、精神的なのりしろみたいなものが必要なのだ。
 そういう意味では、このアルバムが聴きたくなるのはぼくにとっては健康の証しみたいなところがあって、歓迎すべきことである。昔「今日も元気だタバコがうまい」というコピーだかキャッチフレーズだかがあったらしいが、気分は似ているかも知れない。
 
 オリバー・ネルソンという名前をこのアルバムを聴くまで知らなくて、カントリーの人じゃなかったっけ、とか思っていた(それはウィリー・ネルソン)とか、オリバー・ネルソンとエリック・ドルフィーの音の区別がいまいち付かない、といった問題はあまり本質的ではないので、内緒にしておこう。
posted by kiwi at 01:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス

2008年04月20日

フォンテッサ/モダン・ジャズ・カルテット


フォンテッサ
FONTESSA

ミルト・ジャクソン(vib)
ジョン・ルイス(p)
パーシー・ヒース(b)
コニー・ケイ(ds)

1956年録音


 MJQを聴くたびに(特に古いのを聴くたびに)、このひとたち、本当に上手いのかなあ、と思う。ジョン・ルイスのぽつぽつしたピアノなんか、少し練習したらぼくにも弾けるんじゃないだろうか。名手ミルト・ジャクソンも、MJQでやっているときはあんまりそういう感じがしない。ベースも、ドラムスも、別の意味でスリリングと思うことがある。

 が、これが妙に癖になる。手作り感、とでもいったらいいのだろうか。音に奏者の息づかいが残っているようなところがあって、妙に生き生きしているのだ。音楽もあまりきっちり端正に組みあげると、マネキンみたいに血の通っていないつまらないものになってしまうことがあるけれど、MJQの音楽はその対極にある。使い込まれた木製の道具に、手油がしみこんで色が丸く、深くなるように。少し歪んだ手ひねりの焼き物に、なんともいえない味わいがあるように。

 わびさびジャズ。
posted by kiwi at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | コンボ・グループ

2008年04月14日

パリのめぐり逢い/ゲイリー・バートン & ステファン・グラッペリ


Paris Encounter
PARIS ENCOUNTER

ゲイリー・バートン(vib)
ステファン・グラッペリ(Vio)
スティーブ・スワロー(b)
ビル・グッドウィン(ds)

1969年録音


 合いそうにないモノをいっしょに食ったら、思いがけず美味かった、という話は時々聞く。納豆とパスタ(なかなか勇気がでないが)、イチゴと大福。チーズとかまぼことか、アンコとパンなんてのも、今でこそ当たり前の組み合わせだが、最初はゲテモノ扱いだったのではないだろうか。
 このアルバムを聴きながら、ふとそう思った。


 ゲイリー・バートンといえば「クリスタル・サイレンス」に代表される、ちょっとひねくれたクールな演奏が持ち味。一方のステファン・グラッペリは口笛みたいに暖かみがあって、タップダンスみたいに楽しい音楽をやる人で、水と油とは言わないけれど、この二人がぴったり来る、とは誰も思わなかったはずだ。ぼくもこの二人からどんな音楽が出てくるのか見当もつかなかった。


 ところがこれがなかなかの珍味。奇妙なことにゲイリー・バートンはやっぱりゲイリー・バートンだし、ステファン・グラッペリもやっぱりいつものステファン・グラッペリだ。ふたりとも相手に合わせて自分の音楽を変質させようとはしていない。それでいて二人は同じゴールに着く。これはちょっと不思議で、スリリングな体験だった。

 
 今度納豆パスタを食ってみようと思う。
posted by kiwi at 00:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年04月12日

フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ/スーパー・ギター・トリオ


フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!
Friday Night in San Francisco

パコ・デ・ルシア(g)
アル・ディ・メオラ(g)
ジョン・マクラフリン(g)

1980年録音


 てめえら人間じゃねえ。

 
 いずれ劣らぬ当代の名手3人の生ギター。すさまじい音の嵐が目の前で、みるみるうちに加速する。限界は見えない。音速の壁を易々とぶち抜き、ソニックブームが観客席をなぎ払う。たまらなくなったオーディエンスが「ぎょえー」「うきゃー」と悲鳴する。無理もない。
 音楽は軽業ではないけれど、心の早さや熱さに指がついてこなければ、伝えるべきものの何割かは奏者の外には出て行かない。テクニックとはつまり、そういうものなのだ。

 好きな音楽のジャンルにかかわらず、このアルバムは一度聴いておいて損はない。人間の能力というものについて認識を新たにするとともに、きっとあなたも叫ぶだろう。

 ぎょえー。
posted by kiwi at 14:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2008年04月09日

ベイカーズ・ホリディ/チェット・ベイカー


Baker's Holiday: Chet Baker Plays & Sings Billie Holiday
BAKER'S HOLIDAY

チェット・ベイカー(vo,flh)
エヴェレット・バークスデイル(g)
ハンク・ジョーンズ(p)
リチャード・デイビス(b)
コニー・ケイ(ds)


1965年録音


 チェット・ベイカーとビリー・ホリディにはちょっと似たところがある。ふたりともそれぞれの分野で頂点を極めながら、麻薬まみれの破滅型の人生を送り、逮捕され、ブランクと復帰を繰り返し、幸せとはいえない死に方をした。いずれも哀愁に満ちた陰のある音楽が持ち味で、二人のそんな暗い部分に惹かれるファンが少なくはないらしい。

 そんなチェット・ベイカーが、そんなビリー・ホリディの持ち歌を演奏するのがこの「ベイカーズ・ホリディ」で、どんだけ暗いんだろうとちょっと引きぎみで聴いてみたら、これがまあ、なんともお気楽で呑気でポカポカなのだった。油断しているとあちこちゆるんで、ハナミズと涙とヨダレが垂れ流しになりそうだ。

 ぼくは時々思うのだけれど、ひとの人生をつかまえて破滅型だ、悲劇的だと断ずるのはきっと正しくない。人間、辛いばっかりでは生きていけない。どんなに張りつめて生きているようにみえるひとにだって、のんびりのんきな休日だってあるだろうと思うのだ。
 それがタイトルの「ホリディ」の、もう一つの意味なのだろう。
posted by kiwi at 23:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | ラッパ

2008年04月06日

クリスタル・サイレンス/チック・コリア&ゲイリー・バートン


クリスタル・サイレンス
Crystal Silence

チック・コリア(p)
ゲイリー・バートン(vib)

1972年録音


 こういうタイトルなので、夜、寝床で聴いたらぴったりきそうだが、実はそういう聴き方はあまり向いていない。クリスタルでサイレンスなくせに、演奏はけっこうホットなのだ。ふたりの丁々発止の打ち合いもあって、うっかり乗せられると目が冴えてしまう。

 このアルバムを聴くシチュエーションとしてはむしろ早朝、ジャケットに倣って日の出、朝焼けを挟む1時間くらいが最適なのではないだろうか。場所としてはむやみに高いところ、高度2500mくらいのところをおすすめする。そういうところでは回りに迷惑もかからないだろうから、ボリュームはいっぱいにあげて、音と音の隙間までじっくりと聴いてみたい。

 うまくすると空が飛べるかもしれない。
posted by kiwi at 22:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2008年04月02日

モーニング・アイランド/渡辺貞夫


モーニング・アイランド
Morning island

渡辺貞夫(as)
デイブ・グルーシン(p)
ジェフ・ミロノフ(g)
フランシスコ・センテーノ(b)
スティーブ・ガッド(ds)


1979年録音


 どんなことにも“はじめて”がある。はじめての鼻血、はじめての骨折、はじめてのC、はじめてのジャズ。

 ぼくのジャス散歩は実にこの1枚から始まった。サッチモも、ビル・エバンスも、グラッペリもヘレン・メリルもマイルスもウェス・モンゴメリーもミルト・ジャクソンもピーターソンもブラウニーもチック・コリアもパコ・デ・ルシアもアート・ブレイキーも、渡辺貞夫がいなければ出会わなかったかもしれない。そう思うといとおしい、ぼくにとっての奇跡の1枚。

 LPを手放してからずっと手元になくて、ずいぶん久しぶりに通して聴いたのだけれど、発見がいくつかあった。

(1)渡辺貞夫のフルートって上手いのだろうか?
(2)アルバムを通して聴くと、やっぱり違う。
(3)フュージョンだったのか!
posted by kiwi at 23:20 | Comment(0) | TrackBack(1) | サックス