2009年01月24日

ソウル・フュージョン/ミルト・ジャクソン&モンティ・アレキサンダー


ソウル・フュージョン(紙ジャケット仕様)
Soul Fusion

ミルト・ジャクソン(vib)
モンティ・アレキサンダー(p)
ジョン・クレイトン(b)
ジェフ・ハミルトン(ds)

1977年録音


 多くのひとにとって、ミルト・ジャクソンの名前はMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)と結びついているのではないかと思うが、ぼくにとっては必ずしもそうではない。MJQは好きだが、純粋にミルト・ジャクソンを聴きたいときに取り出すのはむしろそれ以外のアルバムだったりする。それはたぶん、一番最初に聴いたミルト・ジャクソンが、このアルバムだったことと無関係ではない。

 それはジャズを聴き始めたころで、どういうきっかけでこのアルバムを手に取ったのかはよく覚えていない。モンティ・アレキサンダーはもちろん、ミルト・ジャクソンが何者かも知らなかった。だいたいヴァイブというのがどういう楽器かもよくわかっていなかったんじゃないだろうか。そんな、生まれたてのサルみたいにまっさらな初心者小僧に、この音楽は強烈に食い込んだ。なにしろ、この音楽を楽しむためには何の技術も努力も必要ないのだ。まるで流行歌のようにスムーズに、でも明らかに流行歌とは異なる滋養がするすると入ってくる。これは新鮮な驚きだった。しかも曲のメリハリが効いていて、強烈に身体を揺さぶるドライブ感から、足元からじわじわと暖かくなってくるようなブルースの感覚まで体験できる。ジャズの面白さを知るには絶好のアルバムだったと今でも思う。
 おかげであとでMJQに出会ったとき、最初は地味に聴こえて、いまひとつピンとこなかった。味の濃いカレーを食ったあとで、よい紅茶を飲んでも味がよくわからない。


 いまではぼくも、MJQのミルト・ジャクソンも十分に楽しめるようになったけれど、このアルバムは今も変わらずぼくの名盤の1枚だ。おりに触れて聴いては、あのときのびっくりが薄れていないことを確かめるのは、ぼくにとってはちょっとした儀式みたいなものになっている。で、そのたびにミルト・ジャクソンはもちろん、江戸前職人みたいに勢いと抑制を併せ持つモンティ・アレキサンダーに聴き惚れるのだ。
posted by kiwi at 23:29 | Comment(4) | TrackBack(0) | ヴァイブ

2009年01月24日

オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット


オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット
Gerry Mulligan Quartet

ジェリー・マリガン(bs)
チェット・ベイカー(tp)
ボブ・ホイットロック(b)
カーソン・スミス(b)
チコ・ハミルトン(ds)
ラリー・バンカー(ds)

1952〜53年録音


 50年代のはじめにおいて、彼らの音楽はどれだけかっこよかったのだろう、と思う。その時代のその場所に身をおいてみないとわからないタイプのかっこよさ、というものは確かにあって、このアルバムにはそういう熱の名残がある。灼熱の溶岩が、テレビ画面の向こうからでも温度のない熱みたいなものを発散するように。
 そしてまた、時代が移り変わっても変わらないタイプのかっこよさ、というものもある。こっちは半世紀も前に録音されたこのアルバムにばっちり封じ込まれている。石に封じ込まれた凶悪強大な魔物みたいに。


 このかっこよさは、このアルバムの歴史的な価値とはたぶんあまり関係ない。メンバーがみんな若くてかっこいいこととはたぶんちょっと関係がある。しかしなによりもこのアルバムをかっこよさしめている(?)のは、こいつらの、おれたちが世界を変えてやる、という不遜かつ不穏な空気なのだ。

 それはいつでも、どこでも、かっこいい。
posted by kiwi at 23:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス

2009年01月17日

ジャグ/ジーン・アモンズ


Jug
JUG

ジーン・アモンズ(ts)
リチャード・ワイアンズ(p)
クレランス・アンダーソン(p,org)
ダグ・ワトキンス(b)
レイ・バレット(conga)
J.C.ハード(ds)

1961年録音


 正月早々引きこんだ風邪が、どうもすっきりとは治らない。熱は下がったし、頭痛とだるいのもよくなったのだけれど、何かの拍子に、たとえばぬくぬくと布団にもぐって本を読んでいるときなどにふと、肩口から水を一筋流し込まれるように悪寒が走ることがある。風邪の尻尾が身体の芯から抜けきっていないみたいだ。中途半端で気色が悪い。じゃあいっそこじらせてやろう、とは思わないけれど。
 ひょっとしたら栄養が足りていないのではないか、と思いついて、食欲が戻ったのをいいことにお好み焼き屋でお代わりしたり、回転すし屋で暴食したりしてみた。腹は張ったが、風邪が抜けるかどうかはまだわからない。

 こういうときには音楽も、小難しいチャカチャカしたやつじゃなくて、もっと身体の温まる、栄養のあるやつがよい。というわけで、ここ数日、このアルバムを繰り返し聴いていた。
 もし風邪に効く音楽がというのがあるとすれば、きっとこういうやつだろうと思う。
posted by kiwi at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス

2009年01月04日

ブラック・マーケット/ウェザー・リポート


ブラック・マーケット
Black Market

ジョー・ザヴィヌル(p,kb他)
ウェイン・ショーター(ss,ts他)
ジャコ・パストリアス(b)
アルフォンソ・ジョンソン(b)
チェスター・トンプソン(ds)
ドン・アライアス(parc)


1975〜76年録音


 ジャズに限った話じゃないと思うが、幾度となく聴いている音楽がある日何かの拍子にぴたりとはまり、忘れがたい印象を残すことがある。ある日ふと思いついて窓を開けてみたら、空気の香りとか風の肌触りとか日当たりの温度とかに今更ながら気がついて、それまで窓越しに眺めるだけだった景色がまるで違うものに見えてくるような、そんな感覚だ。
 たぶん、そのときの心情とか体調とか状況とかあたりの雰囲気とかに、それまでにその音楽に接した経験が複雑に絡み合って、そういうことが起きるのだろう。そんなにしょっちゅう起きるわけじゃないので、後になってもけっこう覚えていたりする。
 このアルバムではそういうことが起きた。釣り旅に出かけた北海道の原野の中の一軒宿で、丸木で作られたコテージのベッドに潜り込んで、明日はどこの川に出かけようかと考えながら、iPodでこのアルバムを聴いていたときのことだった。
 おかげでぼくはいまでも、タイトル曲「ブラック・マーケット」を聴くと、北海道の川と原野と、綺麗で獰猛な魚たちのことを思い出す。ジョー・ザヴィヌルもびっくりだろう。


 ところでぼくは、「ブラック・マーケット」は賑やかで楽しい黒人の市場、という意味だと思っていた。ジャケットを見たってそうとしか思えない。ところがジョー・ザヴィヌルによると、彼が少年時代を過ごしたウィーンの闇市がこの曲のテーマなのだそうだ。どうもジャケットデザインの作業過程で誤解があったんじゃないかと思うが、それはともかく、音楽のイメージを代表するという意味では、このジャケットはいい線行っているんじゃないかと、ぼくは思う。

※「知っているようで知らないジャズ名盤」小川隆夫
posted by kiwi at 01:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | コンボ・グループ