2009年05月24日

夢のあとで/ローランド・ハナ


夢のあとで(紙)
Apres un Reve

ローランド・ハナ(p)
ロン・カーター(b)
グラディ・テイト(ds)

2002年録音


 速いテンポの白熱した曲を弾いても、静かに沈み込むブルージーな曲をやっても、どこかに淡々と醒めたところがある。といっても冷たい感じがするわけではなく、自分も含めた状況を一歩引いたところから眺めていて、みんなにわからないようにバランスをとっている、大人の余裕みたいなものを感じるのだ。クラシックを題材にとっているせいもあるのだろうけれど、それだけではない。たぶん、それがローランド・ハナという人の芸なのだろう。一緒に仕事をしたいタイプだ。
 ベースのロン・カーターもそう思ったんじゃないだろうか。相当のご機嫌で、楽しそうだ。

 意味不明なのがジャケットで、このアルバムをジャケ買いしたひとは、中身を聴いてどう思うのだろう。喜ぶのだろうか、それともがっかりするのだろうか。よくわからない。
 まあ、太ももは好きだけれど。
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2009年05月23日

ツツ/マイルス・デイビス


TUTU<紙ジャケット仕様>
Tutu

マイルス・デイビス(tp)
ジョージ・デューク(tp)
ジェイソン・マイルス(p)
マーカス・ミラー(b)
オマー・ハキム(ds)
ポウリーニョ・ダ・コスタ(perc)


1986年録音


 子供の頃、身の回りにはかっこいいものがたくさんあった。交番のおまわりさん、ボタンがたくさんついているレジ、オニヤンマ、超合金、白いマフラー、みのむし、爆竹、ラッパズボン、魚屋のおっさん、蛇の抜け殻、ハンドルが下向きに曲がっている自転車、マント、かまんちょろ(カナヘビ)、五円玉、懐中電灯、バスの運転手、電子フラッシャー、タイヤがゴムのローラースケート、耳のたれている犬。行く先々にかっこいいものがごろごろしているので、子供のぼくは大変忙しかった。

 大人になるにつれて、かっこいいものは減っていく。今思えば、どうしてあれがかっこよかったのかわからないものが、ひとつかふたつある。大人になることで損をすることがあるとすれば、これはそのひとつだ。

 人生にはある程度の数のかっこいいものが必要だ。いくつか失ってしまったのなら、補充する必要がある。ぼくがジャズを聞き続けるのはそのためなのだ。たぶん。
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2009年05月07日

チタリン・シャウト/アーネット・コブ


チタリン・シャウト
Chittlin'Shout

アーネット・コブ(ts)
ジミー・フォード(as)
ジョー・ガラード(p,tb)
ドン・ジョーンズ(b)
カール・ロット(ds)


1971年録音



 音楽にはそれぞれ、それが聴かれるのにふさわしい状況、あるいは気分みたいなものがある。これはけっこう大切なことであって、どんな名盤でもそこを間違えると響いてこない。マヨネーズで生蕎麦を食うみたいなことになりかねないのだ。たとえば血に飢えた凶暴なヒールのプロレスラーの入場テーマ曲がビル・エバンスの「You Must belieave in spring」であってはならないし、6月の明るい雨の降る昼下がりに出窓のところに肘をついている髪の長いお嬢さんがBGMに聴いているのが「ジャズ・アット・マッセイ・ホール」の「Salt Peanuts」であってはならない。
 嬉しいときには嬉しいときに聴くべき音楽がある。哀しいときにもそのための音楽がある。楽しいとき、辛いとき、腹が減ったとき、食い過ぎたとき、微熱があるとき、満員電車でうんこがもれそうなとき、そのときこそ聴くべき音楽があるのだ。たぶん。

 で、このアルバムだが、これはヤケを起こしたときに聴くべき音楽である。そういう状況でこういう音楽を聴くと取り返しのつかないことになりそうだが、それはそれでいいんじゃないかと思うのだ。人生いろいろ。
posted by kiwi at 23:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | サックス

2009年05月06日

スエーデンに愛を込めて/アート・ファーマー


スウェーデンに愛をこめて(紙ジャケット仕様)
To Sweden with Love

アート・ファーマー(tp,flh)
ジム・ホール(g)
スティーブ・スワロー(b)
ピート・ラロカ(ds)

1964年録音


 連休も今日で終わり。いろいろとタイミングが悪くて結局どこにも出かけられないGWだったけれど、それでも休みの終わる夜というのは気分が盛り下がるもので、そんな夜に聴く音楽を選ぶのは難しい。だいたいジャズという音楽が、さあ明日からがんばるぞコノヤロという感じじゃないし、こちらもそういう音楽を聴きたいわけでもない。だったらさっさと寝てしまえばいいのだけれど、なんかそれも中途半端で収まりがつかない。

 このアルバムのアート・ファーマーはいつものように優しく甘やかだけれど、不思議にドライでべたべたしない。どこかすっと空気が抜けて、あまりまとわりついてこないのだ。明日からまた昼間の世界へ、義理と人情と予算とマイルストーンでできている世界へ戻っていく身には、浪花節は胃にもたれる。遠い北の国の歌をドライに奏でる、この人ごと感覚がかえってぴったり来る。
posted by kiwi at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ラッパ

2009年05月04日

橋/ソニー・ロリンズ


橋
The Bridge

ソニー・ロリンズ(ts)
ジム・ホール(g)
ボブ・クランショウ(b)
ベン・ライリー(ds)


1962年録音


 このアルバムについては、知りたいことが2つある。

 ソニー・ロリンズは顔に似合わず繊細で、ときどき雲隠れして自分探しをする癖があるらしい。このアルバムを吹き込む前も2年くらい姿を消していて、その間どこかの橋の「歩行者専用道に自ら身を隠して」練習をしていたと、ライナーノーツに書いてある。それで復帰作が「橋」というタイトルになった、ということなのだろう。
 ぼくはこのくだりを前後の文脈から「人気のないところでこっそりと」という意味だと思っていた。そう読めばこそ、ロリンズのような大物でも人知れぬ努力を怠らないのだ偉いなあ、という解釈が成り立つわけだけれど、よく考えたら「橋」というのは人気のないところではない。交通の要衝なんだから当然人通りの多いところだ。その歩道でソニー・ロリンズがぶーぶー楽器を鳴らしていたら、人だかりができるだろう。狭い日本ならいざ知らず、アメリカでひとのいないところを探すのは難しくないはずだ。もし「人気のないところでこっそり」なら、このアルバムのタイトルは「原っぱ」とか、「山の中」がふさわしいんじゃないだろうか。
 だとしたら、「人気のないところでこっそり」という解釈は間違いで、「ストリート・ミュージシャンからやり直す覚悟で」と読むべきなのだろうか。それとも、アメリカの「橋」というのはぼくの考えているような「橋」ではないだろうか? 

 もう一つ。
 ぼくの持っている盤には8曲録音されているのだけれど、その最後の2曲はCDになって追加された「おまけ」のようだ。ボーナストラックで未発表曲や別テイクが追加されるのは珍しいことじゃないけれど、「If ever I would leave you」「The night has a thousand eyes」という2曲はロリンズの別のアルバム「ドント・ストップ・カーニヴァル」に入っている同名の曲と同じに聞こえてしょうがない。気のせいだろうか?
posted by kiwi at 20:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス

2009年05月03日

グルーヴ・ヤード/ウェス・モンゴメリー


Groove Yard
GROOVE YARD

ウェス・モンゴメリー(g)
バディ・モンゴメリー(p)
モンク・モンゴメリー(b)
ボビー・トーマス(ds)

1961年録音


 ウェス・モンゴメリーはやっぱり、こういう地味な演奏が味があるなあ、と思う。わざわざそれ目当てで出かけていくひとはいないけれど、そのくせかじり始めると止まらない、スルメのあぶったやつみたいな音楽だ。
 スルメのあぶったやつには、商業的な野心も、高踏的な芸術性も、強烈な自己アピールもない。ただ誠実にスルメのあぶったやつであろうとする、それ自体がスルメのあぶったやつの存在理由だ。平穏で安定した世界の象徴。

 ウェス・モンゴメリーがずっとこういう音楽ばっかりやってたとしたら、人気が出たかどうかはわからない。でもこういう、世界の細かいひび割れにじんわりとしみこんで知らずに修繕してしまうようなタイプの音楽は必要なのだ。それはかなり大切なことなのではないかと思う。
posted by kiwi at 23:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース