2009年11月29日

バグス・グルーヴ/マイルス・デイビス


バグス・グルーヴ
Bag's Groove

マイルス・デイビス(tp)
ミルト・ジャクソン(vib)
セロニアス・モンク(p)
パーシー・ヒース(b)
ケニー・クラーク(ds)
ソニー・ロリンズ(ts)
ホレス・シルバー(p)

1954年録音


 タイトル曲の「バグス・グルーヴ」は、ぼくにはトリモチみたいな効果がある。iPodのシャッフル機能でうっかり登場したりすると耳にくっついてしまって、繰り返し聴かないと収まりがつかないのだ。今回は金曜夜、駅から家の道すがらにうっかり耳にしてしまい、そのまま週末こればっかり聴くはめになった。同じアルバムのほかの曲はあっさり風味でそこまでの粘着力はない。この一曲が魔法的にたちが悪い。

 マイルスもミルト・ジャクソンもたいがい悪いが、セロニアス・モンクがとりわけ悪い。
 モンクが誰なのかよく知らなかった頃(今だってよく知らないけれど)、この一曲を聴いてなんだこのピアノ、と演奏者の名前を確認したことがあった。生まれて初めての妙な味がする食い物に出会って、美味いのか不味いのか決めようと少しずつかじっているうちに食べ切っちゃって、それでも美味いのか不味いのかよくわからない。ぼくにとってモンクはそういう存在だ。
posted by kiwi at 19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | ラッパ

2009年11月22日

ライブ・アット・ザ・ライトハウス/グラント・グリーン


Live at the Lighthouse
Live at The Lighthouse

グラント・グリーン(g)
クラウディ・バーティ(ss,ts)
シェルトン・レスター(org)
ゲリー・コールマン(vib)
ウィルトン・フェルダー(b)
グレッグ・ウィリアムス(ds)


1972年録音



 最初はひでえジャケットだなあ、と思ったけれど、聴いているうちに、ああ、これでいいんだ、これしかないんだ、という気分になってきた。高いイタリア製のスーツを着れば、猫でも杓子でも立派に見えるというわけではない。似合う、というのは物事の本質と見かけが分かちがたく結びつくことをいうのであって、そういうことが起きたときに、そのものの見かけは強い印象をぼくらに残す。このアルバムみたいに。

 それはたぶん、音楽そのものにも言えることなんだろうと思う。グラント・グリーンというひとが「中身」で、音楽がその「見かけ」だ。だとすれば、グラント・グリーンに似合った音楽というものがあるはずで、このアルバムにパッケージされているのはたぶん、そういうタイプの音楽なのだ。
posted by kiwi at 00:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2009年11月13日

ブルー・デューク/デューク・ジョーダン


ブルー・デューク
Blue Duke

デューク・ジョーダン(p)
ハリー・エメリー(b)
ジェームス・マーティン(ds)

1983年録音


 人生が、ぼくの好みより若干複雑すぎるな、と思うことがある。そんな夜にはデューク・ジョーダンが無性に聴きたくなる。
 
 デューク・ジョーダンは、いつでもどこでもデューク・ジョーダンだ。彼はデューク・ジョーダン以外の者になろうとはしないし、たぶんなれもしなかったのだろう。ただ演奏家であるからには、変化が必要なときだってある。だからマイルス・デイビスには自伝の中でけちょんけちょんにケナされるし、一時期はピアノを離れて雲隠れもしたんじゃないかと思う。器用なひとでないことは確かだ。

 でも、ぼくは時々、無性にデューク・ジョーダンが聴きたくなる。そんなときは、デューク・ジョーダンじゃなくちゃだめなのだ。それは世界の柔らかい芯みたいに、実直に変わらず、そこにある。それでぼくは少しだけ安心する。
 デューク・ジョーダンはそういうピアノを弾くひとである。
posted by kiwi at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2009年11月03日

スピーク・ロウ/ウォルター・ビショップJr.


スピーク・ロウ
Speak Low

ウォルター・ビショップJr.(p)
ジミー・ギャリソン(b)
G.T.ホーガン(ds)

1961年録音


 いろいろなガイドブックに「幻の名盤」と紹介されている変なアルバム。往時のことは知らないけれど、今は普通に入手できるから幻呼ばわりは変だと思うが、まあだからこそ気になるという面は確かにある。ただの「美少女」より、「幻の美少女」のほうが気になるでしょ? 

 で、幻かどうかはともかく、普通によい。
 変わったピアノじゃない。一撃で聴き手をノックアウトする迫力があるわけでもない。あまり気を入れずに聴いていると、ふーん、と聞き流してしまいそうなところはある。だが、地味に、誠実に、よい。美味い米が、食っているときはこりゃうまいうまいバクバクバク、とならなくても、米が変わるとあれ、これいつものと違う、いつものがいい、と気がつくような良さ、だ。
 ああそうか。街角でふとすれ違った、名も知らぬ美少女のようなものなんだ。すぐそばを通り過ぎるまでその魅力に気がつかず、気がついて振り返ったときにはもう姿が見えない。もう一度会える可能性はほとんどない。そういったときに人は「幻の」という言葉を使うのだ。
posted by kiwi at 23:39 | Comment(3) | TrackBack(0) | ピアノ