2010年05月30日

アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード/グレイト・ジャズ・トリオ


アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
At the Village Vanguard

ハンク・ジョーンズ(p)
ロン・カーター(b)
トニー・ウイリアムス(ds)

1977年録音



 90歳で現役ばりばりってどんな気分なんだろう、とぼくは思う。
 
 調べてみたら、ハンク・ジョーンズは、チャーリー・パーカーよりも、クリフォード・ブラウンよりも、アート・ブレイキーよりも、もちろんマイルス・デイビスよりも年上だ。つまり、モダン・ジャズの神話時代をその目で見てきた、どころじゃなくて、それを築いた一人だったわけで、ジャズを聴くものにとっては、ギリシア神話を読んだひ孫が「ええっ! アポロンって、おじいちゃんのことなの!?」ってびっくりするようなものだ。比喩として適当かどうかわからないけれど。

 でも、それは本人にとっては、それほど重要なことじゃなかったんじゃないかとぼくは思う。
 彼には、初めて鍵盤に触れた日からずっと、90を過ぎるまで、そしてこのあと何百年でも、やり続けたいことがあったのだ。
 それ以上に大切なことってあるだろうか?

 
 ハンク・ジョーンズは天国に行ったが、あっちで古い仲間に背中をバンバンたたかれながら、

   「ちょっ、おまえ、遅せえよ!(笑)」

   「ほら来いよ、演ろうぜ!」

 なんてことになっているんじゃないかと妄想しつつ、ちょっと泣く。
posted by kiwi at 11:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2010年05月14日

フロム・レフト・トゥ・ライト/ビル・エバンス


フロム・レフト・トゥ・ライト+4
From Left to Right

ビル・エバンス(p)
サム・ブラウン(g)
エディ・ゴメス(b)
マーティ・モレル(d)


1969〜70年録音


 通勤中に聴いてて、電車のドアに挟まれそうになった。
 か、かわええ。

 これは一種の「実験作」なんだろうと思う。スタジオはあっちこっち、相棒もいろいろ。エレキピアノを弾いたり、ストリングスとやったり、童謡みたいなあどけない曲が出てきたり。ボサノバまで弾いている。しかもこれがちゃんと「ビル・エバンスのボサノバ」で、あの独特のカラフルな濁りが、呑気なチンチキ・ビートにちゃんと乗っている。あまり聴いたことがないビル・エバンスがいっぱい入っているのだ。

 「実験作」というのは、まあだいたいは「実験したけど失敗しました」という意味で、よほどヒマじゃない限りは避けて通ったほうが無難だけど、このアルバムの「実験」は見てて(聴いてて)とっても楽しい。新しいスタイルを模索してます、といった肩肘張った感じはしない。「わはは、煙が出てきた」「おお、変な色になった」とおもしろがっているビル・エバンスが見えるようだ。巷のイメージより、陽性で気さくな男だったのかもしれない。ビル・エバンス。

 こっちの路線ももっと聴きたい。麻薬なんか止めて、ちっとは身体を大事にして、もっと長生きしてくれればよかったのに。
posted by kiwi at 23:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2010年05月09日

チェット/チェット・ベイカー


チェット
CHET

チェット・ベイカー(tp)
ビル・エバンス(p)
ペッパー・アダムス(bs)
ポール・チェンバース(b)
ハービー・マン(fl)
ケニー・バレル(g)
コニー・ケイ(ds)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

1958〜59年録音


 チェット・ベイカーは鼻歌みたいな変な歌が有名で、そっちのほうから入った人が、へー、トランペットも上手いな、なんて思っていたケースがあるんじゃないかと思うが(ぼくだ)、そういうひとはこのアルバムを聴くと納得がいくと思う(ぼくだ)。
 歌わないチェット・ベイカーの、でもあの調子で歌っているチェット・ベイカー。

 スカッとした哀しみ、というものがもしあるとすれば、こんな音がするかもしれない。いずれ失われるとわかっているものに対する輪郭のはっきりしない哀惜。子供の頃、友達と思う存分遊んで、気持ちよく疲れて一人帰る夜道でふと星空を見上げて、なんだか急に心細くなる、あんな感じだ。

 このジャケットに二の足を踏んでいるひとは、もう一度メンバーを見直してみることをお勧めする。
posted by kiwi at 23:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | ラッパ

2010年05月08日

アート・オブ・ザ・トリオ4/ブラッド・メルドー


Art of Trio 4: Back at the Vanguard
Art Of Trio 4 Back At The Vanguard

ブラッド・メルドー(p)
ラリー・グレナディア(b)
ホルヘ・ロッシィ(ds)

1999年録音


  風呂で音楽を聴きたいと思っていたところに、Amazonで手頃な防水スピーカーを見つけて、ためしに買ってみたら結構よかった。シンプルだけどよくできていて、こういう「創意工夫」のにおいがする製品は好きだ。音もまあまあだし、何より安い。

 記念すべき風呂ジャズの第一弾はブラッド・メルドー。どこがいいのかよくわからないのだ。風呂場は気の散るものはないし、邪魔も入らない。居眠りしたらガボガボとなって目が覚める。密室で一対一で向き合って、とことん話し合ってみようではないか。

 とはいうものの、このひとの複雑怪奇な語り口はやっぱり、何がいいたいのかよくわからない。音の粒を一生懸命たどっていくと、いきなり袋小路に突き当たったり、ぐるっとまわって元に戻ってきたり。あ、あっちになんか出た、と見に行くとぷしゅーと破裂して何もなくなってしまったり。いやいやそういうことではいかん音楽は虚心坦懐に心で聴くのだ、とぼーとしていると、ゲシュタルト崩壊みたいなことになって音楽なんだかピアノとドラムのたたき合い合戦なんだかよくわからなくなったり。おまけに迫力は半端じゃないので、何を言っているのかよくわからないのになんとなく説き伏せられてしまいそうになる。いや、そうはいかないぞ今のところもう一度話してみなさいだからそこ何やってるわけ? よしもう一度、だからそれなんで・・・・・・・のぼせた。

 ブラッド・メルドーは風呂にはあまり向いてない。
posted by kiwi at 21:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ