2012年10月28日

ワーキン/マイルス・デイビス

ワーキンWorkin' with the Miles Davis Quintet

マイルス・デイビス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

1956年録音

このブログを別にすれば、人前でジャズの話をすることはほとんどない。

ジャズが好きなんです! とアピールして、もてたとか、給料が上がったとか、有給休暇が増えたといった話はあまり聞かない。英検とか大型特殊免許みたいに履歴書に書いて自慢できるわけでもない。普通の飲み会で盛り上がる話題でもない。新人の可愛い女の子が目をキラキラさせて、ジャズ聴くんですか私も興味があるので教えて下さい! みたいなことは現実社会では起こらないのだ。

もちろん相手が同好の士であれば話は別なのだけれど、それはそれでなかなか難しい。大学のジャズ研の打ち上げとか、ブルーノート・レコードの新入社員歓迎会とか、そういうよっぽど特殊な状況でなければ、まわりの人がみんなジャズを聴くひとである、という状況にはなり得ない。その結果、どういうことになるかというと、賑やかな宴席の一角で中年オヤジが二人で額を寄せあって(どういうわけだかジャズファンにはどこかズレた中年オヤジが多い)、ヒソヒソ話をする、という若干気味の悪いことになる。

「・・・やっぱり”カインド・オブ・ブルー”だろ」
「・・・ぼくも好きです」
「エレキに行く前がいい」
「エレキに行った後もかっこいいです。”ツツ”とか」
「おれはアコースティックがいい。メンバーも凄い。ピアノ誰だっけ」
「・・・レッド・ガーランド?」
「・・・もっと後」
「・・・ハービー・ハンコック?」
「・・・もっと前」
「・・・ビル・エバンス?」
「そうビル・エバンス。ビル・エバンスはいい」
「・・・サックスは?」
「コルトレーン」
「・・・肩凝りません?」

誰も話に入ってこれない。

まあ、誰にも迷惑をかけないのなら好きにすればいいところだが、宴席の趣旨が送別会で、相手がその主役だとすれば、やや問題ではあっただろう。

でも、それでもぼくは、世話になったその人とジャズの話がしたかったのだ。
仕事の話しかしたことがなかったので。
posted by kiwi at 22:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | ラッパ

2012年10月19日

エクスプロレイションズ/ビル・エバンス

Explorations
Explorations

ビル・エバンス(p)
スコット・ラファロ(b)
ポール・モチアン(ds)

1961年録音

夜半を遠く過ぎて帰ってきて、明日だって会社だから寝なくちゃいけないんだけど、このまま寝たらうなされそうだし、一日仕事しかしてないというのもシャクだし、せめてなんか聴いてクールダウンを、という状況下で、聴けるアルバムはそうはない。あれでもない、これでもない、と聞き散らしたあげく、最後に落ち着いたのはやっぱりビル・エバンス。

沁みるなあ。

posted by kiwi at 01:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | ピアノ

2012年10月13日

デュークス・デライト/デューク・ジョーダン

Duke's DelightDUKE'S DELIGHT

デューク・ジョーダン(p)
リチャード・ウィリアムス(tp)
チャーリー・ローズ(ts)
サム・ジョーンズ(b)
アル・フォスター(ds)

1975年録音

いまさらだけれど、会社で働くということはこれでなかなかに大変だ。夜中なのに人がいっぱいいるオフィスで夜食を食う余裕もなく、片手で煎餅をかじりながら俺たちなにやってんだろ、と思うこともあるし、偉い人が喧嘩したせいでなぜかぼくが2人分の仕事をしなくちゃならない、というよくわからないことも起きる。黙っていればいいのに、そのやり方はうまくない、という指摘をしたために睨まれて、しかも何の改善もされなかったりすることもある。いい年なんだし、ぼくはもう少し要領を覚える必要があるのだろうけれど、そういう才能のあるやつはきっとジャズなんか好きにならない。たぶんぼくは、一生こういう調子でやっていくしかないのだ。
やれやれ。

聴いている方もそうだけれど、演奏しているほうも(一部の例外を除けば)、あまり目端の利くほうでなさそうだ。音楽業界のことはよく知らないが、ジャズよりは将来性のある音楽はいくらでもありそうな気がする。
その中でもデューク・ジョーダンは要領の悪いチャンピオン格だとぼくは思っている。ずいぶん勝手、かつ失礼な言い草だが、あちこちで読んだり聞いたりしたエピソードによると、少なくとも世渡りの上手なひととは思えない。音楽を聴いていてもそう思う。デューク・ジョーダンの音楽は、いつでもデューク・ジョーダンの音楽だった。それ以上でも、それ以下でもない。職人が10年20年、同じスタイルのものを作り続け、たまに時代がそばに寄ってくるとふと売れたりする、そんな雰囲気がこの人の音楽にはある。

でも、たぶんそんなことはあまり重要じゃないのだ、とぼくは思っている。要領が良かろうと悪かろうと、変わろうと変わるまいと、大切なのはぼくはデューク・ジョーダンの音楽を聴くと、少しだけ元気を取り戻すことがある、ということだと思うのだ。

デューク・ジョーダンはもう死んでしまったが、もしそう伝えることができたら、喜んでくれたんじゃないだろうか。
posted by kiwi at 21:49 | Comment(1) | TrackBack(0) | ピアノ

2012年10月13日

トゥルーブルー/ティナ・ブルックス

トゥルー・ブルー+2
TURE BLUE

ティナ・ブルックス(ts)
フレディ・ハバード(tp)
デューク・ジョーダン(p)
サム・ジョーンズ(b)
アート・テイラー(ds)

1960年録音

手のひらサイズのiPodに持っているアルバムが全部入ってしまい、数百枚の中からいま聴きたい1枚を指先一本で呼び出せるとはいい時代になったものだと思うが、その代わりに音楽をヘッドホンでばかり聴くようになってしまった。
たまには大きいスピーカーの前で、浴びるように聴きたい。
「セロ弾きのゴーシュ」に出てくるヤマネみたいに、骨や筋肉で音楽を聴きたい。
と思っても、できる投資は限られている。野中の一軒家ではないから、夜中に大きな音は出せない。築40年のおんぼろわが家は、さぞかし音の風通しもいいだろう。

そんなおり、近所に思いがけずジャズ喫茶ができたというのでおそるおそる行ってみた。
ジャズ喫茶って、あれだよね? 難しい名前の巨大なスピーカーと真空管のアンプがあって、いつも苦虫を噛み潰したみたいな顔をしているマスターがいて、客はテロリストみたいな男ばっかりで、コーヒーは煮返したみたいで、汚くて、煙くて、客にはリクエストシートと鉛筆が配られて、パット・メセニーをリクエストしたりすると常連客に殴られる、そういうところだよね? 話なんかしちゃいけないんだよね?

センスのいいネオンの映える、前面ガラス張りの、洒落たカフェかバールという感じの店内に一歩入ると、奥の席から若い女の客のキャーという笑い声が聞こえて、いきなり帰りたくなった。スピーカーはどこにあるのかわからない。というか、ジャズらしき音楽は流れてはいるが、そもそもアベック客の嬌声でよく聴こえない。マスターは如才ない感じのにこにこ顔の若い兄ちゃんで、リクエストなんかしたらきょとんとされそうだった。食い物は普通にうまかった。

なかなかうまくいかないのである。

自分の部屋のPCの両脇に配置したアンプ内蔵スピーカーで、iPod内のティナ・ブルックスをほどほどの音量で聴きながら、ふと思う。
快適なばかりでも面白くないな。
あと、フレディ・ハバード上手すぎ。
posted by kiwi at 19:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | サックス