2014年05月30日

シティ・コネクション/日野皓正

シティ・コネクション
City Connection

日野皓正(tp)
アンソニー・ジャクソン(b)
ハワード・キング(ds)
ジャニス・ペンダヴィス(vo)

1979年録音

これもよく聴いたなあ。ジャケットからレコードを取り出すときの持ち重りと、針を落とす前の胸騒ぎを今も覚えている。これとか、渡辺貞夫の「モーニング・アイランド」、ネイティブ・サンの「サバンナ・ホットライン」あたりが、当時のぼくにとっての「ジャズ」だった。3枚ともテレビCMに使われていた曲が入っているあたりはご愛嬌。

ジャズという音楽への入り方としては悪くなかった、とぼくは今でも思っている。マイルスの「ソー・ホワット」に衝撃を受けて、という人もいるだろうけれど、ぼくはそうではなかった。その代わり、ソー・ホワットに至る道のりを十分楽しんだつもりだ。

そしてソー・ホワットの何やらについてそれなりに味わえるようになった今でも、ぼくはこのアルバムが、楽しい。若かりし頃の音楽的相棒、という贔屓目を割り引いても、傑作だと思うのだ。

今日聴いて、最後のブルー・スマイルズ(ブルー・ミッチェルに捧ぐ)  という曲に気がついた。当時は誰だろうと思っていたが(たぶん)、あのブルー・ミッチェルかあ。気づくまで35年。



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2014年05月24日

シロッコ/パコ・デ・ルシア

Siroco
Siroco

パコ・デ・ルシア(g)
ルーベン・ダンテス(g)
ペペ・デ・ルシア(palmas)

1987年



男の人生には、「うっ、やばい。鼻血出そう」という状況がたまに発生する。腹の底で色々なものの圧力が高まって、出口を探して盛り上がってくる不穏な気配。メーターが振りきって安全弁が飛んだら、若干みっともないことになるんじゃないか、という予感。いくつか想定できるその危険なシチュエーションの中に、パコ・デ・ルシアを大音量で浴びるように聴く、というパターンを入れていい、とぼくは思う。
フラメンコというのはつまり、その無方向な鼻血エネルギーを制御しきって、ひとつの音楽として昇華する、見事な方法論なのだ。

そういう音楽なんだから、当然、パコ・デ・ルシアは青筋立ててしゃかりきに演奏していると思っていたのに、Youtubeで見たのは、涼しい顔でギターを奏でる、ハンサムな死神博士だった。そのギャップにびっくりして、これは一度この目で見ないと、と考えたものだ。

その機会に恵まれないまま、パコ・デ・ルシアは旅行先のメキシコで急に亡くなった。
ギター・レジェンド、逝く。66歳。

せめて、彼の音楽を聴いて、思う存分鼻血を出そうと思う。

posted by kiwi at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ギター・ベース

2014年05月24日

ヤロン・ヘルマン・デビュー

ヤロン・ヘルマン・デビュー
Variations

ヤロン・ヘルマン(p)

2006年

一部ではキース・ジャレットっぽいと言われているらしいけれど、キース・ジャレットっぽいピアノを聴きたいなら、キース・ジャレットを聴けばいいと思う。
あえて比較をするならば、キース・ジャレットほど高踏的ではなく、ちょっとこじんまりとしていて、変にキレたりせず、より可愛げがあり、ピアノはむちゃくちゃ上手いというわけではなく、ちょっと思い込みの強いところがあって、わりと何を考えているかわかりやすい。要は別人だよなやっぱり。

春から夏への季節の変わり目、金曜日の深夜に、夜風に吹かれながら聴くのもなかなかだったが、本当は晩秋の夜更けに、ドテラ着て濃い緑茶をふーふーしながら聴くとより雰囲気が出るのではないかと思った。

posted by kiwi at 00:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2014年05月21日

スペイン/ミシェル・カミロ &トマティート

Spain
Spain

ミシェル・カミロ(p)
トマティート(g)

1999年録音

 近所にこってり系のラーメン屋さんがあって、腹ペコで帰って来た金曜日の夜などに、ときどき行くのを愉しみにしていた。ぼくとこってりラーメンの蜜月時代は何年も続いたが、ある日、いつものラーメンをたらふく食った夜中に、気持ち悪くなったことがあった。妻はラーメンの後に、揚小丸を半袋分食べたりするからだ、と主張していたが、そうではない。今までその程度のことで気持ち悪くなったりはしなかったからだ。

 ぼくの、こってりラーメンが必要な時代が終わったのだ。

 ミシェル・カミロの超絶ピアノをまとめて聞くと、あのラーメンのことを思い出す。こういう正面切って挑んでくる高密度の音楽は、受け止めるにもそれなりのスタミナが必要だ。もっと若い頃に出会っていたら、喜んでおかわりをしただろう。今は数曲を集中して聴くのがちょうどいい。

 ぼくも歳をとったなあ。
posted by kiwi at 23:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2014年05月18日

処女航海/ハービー・ハンコック

処女航海
Maiden Voyage

ハービー・ハンコック(p)
ジョージ・コールマン(ts)
フレディ・ハバード(tp)
ロン・カーター(b)
トニー・ウィリアムス(ds)

1965年録音

 ずいぶん前、チック・コリアにはまっていた頃、並んでしょっちゅう名前が出てくるのがハービー・ハンコックだった。当然、折にふれて聴いてみるのだが、どうもピンとこない。マイルスの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」で鳥肌ものの演奏を見せるかと思えば、「ヘッドハンターズ」も演る。VOSPも率いてみせる。なんだかぬるぬると正体が掴めない。ただの器用な人なんじゃないかという気もしてくる。その印象は今もあまり変わらない。ずいぶん聴いてはみたけれど、結局好きにはなれなかった大物のひとりだ。

ただ一曲「処女航海」。これだけが耳から離れない。このアルバムも、アルバムとしてはあまり聴かないけれど、冒頭「処女航海」だけは繰り返し聴く。フレーズが印象的で耳に落ちやすい、という部分は確かにある。でもそれだけではないような気がするのだ。

新しいものを思いついて試してみるとき、そこには何か、計算外の勢いみたいなものが生まれることがある。これ、ひょっとしたらイケてるんじゃないか、みたいな作り手側の子供じみた高揚感。乱暴だったり、やぶれかぶれだったりすることも少なくないが、そのはみ出しているところが面白い。
もちろんこの曲はやぶれかぶれでも乱暴でもない。だがその向こうに、才人ハービー・ハンコックの意図しない「パンチラ」がちらりと見えちゃった気がするのだ。あっ、白!

・・・我ながら気持ち悪い比喩だ。

posted by kiwi at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ