2011年09月04日

ルグラン・ジャズ/ミシェル・ルグラン

ルグラン・ジャズ +3
Legrand Jazz


マイルス・デイビス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
ビル・エバンス(p)


1958年録音

 こういう具合にあちこちに才能をがっぽがっぽと大盤振る舞いしても、ぜんぜんなくならない、というのはどういう気分なんだろうと思うことがある。なんかこの人のセンスは、長年の修行と艱難辛苦を経て身につけたもの、という感じがしない。もっと自然に、息をするように、空気の中からどんどん音楽を取り出してしまうんじゃないか。それが正しいかどうかはわからないが、世の中にはそういう人がいるんだ、と信じていたい気がするのだ。ソロモン王は動物と話ができたんだ、と信じるみたいに。

 「東京JAZZ 2011」で見たミシェル・ルグランは御年79歳。ボリュームたっぷりのカウント・ベイシー、血管切れそうな熱演の寺井尚子の後にピアノトリオで出てきて、正直大丈夫かなとも思ったが、なんか大丈夫とか大丈夫じゃないとかいうレベルの話ではないのだった。ミシェル・ルグランは確かに空気から音楽を取り出す魔法使いであり、それがジャズなのかどうかとか、さすがに弾き語りはないんじゃないかとか、そういうことはわりとどうでもいいんだと思った。眉毛は切ったほうがいいと思ったけど。

 アンコールの「シェルブールの雨傘」はどんどんリズムを変えてみせるパフォーマンス付き。とにかくなんかやらずにいられない「才人」ミシェル・ルグランは健在で、ぼくはちょっと嬉しくなったのだった。
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2009年07月20日

おもいでの夏/ミシェル・ルグラン〜ステファン・グラッペリ


おもいでの夏
Legrand Grappelli

ミシェル・ルグラン(p,arr)
ステファン・グラッペリ(Vln)
ジョン・ファディス(tp)


1992年録音


 ステファン・グラッペリとミシェル・ルグランが組んだアルバムがあると聴いて迷わず買った。きっとフジヤマゲイシャニンジャ風の、ステレオタイプ的にかっこいいおフランスのジャズが聴けると思ったのだ。おまけに曲目がセ・シボン、枯葉、おもいでの夏、シェルブールの雨傘ときたら、これは買うでしょう。
 聴き始めて数十秒でしまったと思った。そうだった。ミシェル・ルグランがやると、みんな映画音楽になってしまうのだった。マイルスしかり、オスカー・ピーターソンしかり、ステファン・グラッペリも例外ではない。ある意味たいしたものではあるけれど。

 ステファン・グラッペリの軽妙洒脱、当意即妙の音楽を、オーケストラやアレンジという額縁にはめ込むメリットは特にないので、このアルバムは謎の映画のサウンドトラックを聴くつもりで聴くのが正しい。これは舞踏会のシーン、これはビンタくらったあとに雨が降ってきたところ、これは牛丼をのどに詰まらせて苦しんでいるところ、これは帝国軍が攻めてきたところ、これは悪玉の親分が行方不明の父親だったことがわかったところ、などと適当な妄想をふくらませながら聴いていると、それはそれで楽しい。
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2009年03月29日

ソウル・ボサノヴァ〜ベスト・オブ・ジャズ・ファンク/クインシー・ジョーンズ


ソウル・ボサノヴァ~ベスト・オブ・ジャズ・ファンク
The best of Quincy Jones

クインシー・ジョーンズ&ヒズ・オーケストラ

1960年代


 ぼくがクインシー・ジョーンズという名前を知ったのはたぶん「愛のコリーダ」で、ずっとポップス畑のひとだと思っていた。あとになって「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」に一枚かんでいるのを知ったとき、へえ、若いころはジャズにも手を出したりしていたのか、と思ったものだ。もともとジャズ・トランペッターで、ライオネル・パンフトン楽団にいたり、デイジー・ガレスピーと仕事をしていたということを知ったのはわりと最近のことだ。
 先日、CD屋で「愛のコリーダ」がジャズの棚に入っているのを見つけた。そりゃ違うんじゃないかと思ったけれど、きっとこの分類をした店員はジャズファンに違いない。ちょっと話をしてみたかった。

 何も知らずにこのアルバムを聴いたら、ぼくはこの音楽を作った人はきっと江戸っ子だろう、という妙な解釈をしていたんじゃないかと思う。威勢がよくてさっぱりしており、派手で元気でストレートでええかっこしいで陰にこもらない。そのくせ職人気質でどこかで技を使いたがる。大きい音で聴くと元気が出る。

 ライナーノーツにデータがほとんど載っていない。録音が1960年代とあるだけで、録音日時も場所も演奏者もわからないのだ。クレジットのない映画みたいで気色が悪い。きちっとしてほしい。感想なんかぼくだって書けるんだから。
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2009年02月02日

ザ・ブロードウェイ・ビット:アイ・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー/マーティ・ペイチ


ブロードウェイ・ビット(SHM-CD/紙ジャケットCD)
The Broadway Bits

マーティ・ペイチ(p)
アート・ペッパー(as)
スコット・ラファロ(b)
ビクター・フェルドマン(vib)


1959年録音




アイ・ゲット・ア・ブート・アウト・オブ・ユー(SHM-CD/紙ジャケットCD)
I Get a Boot out of You

ラス・フリーマン(p)
アート・ペッパー(as)
ビル・パーキンス(ts)
メル・ルイス(ds)


1959年録音


 マーティ・ペイチのビックバンドのアルバムに「踊り子」「お風呂」の通称で知られる有名盤がある。アート・ペッパーが(踊り子のほうにはスコット・ラファロも)参加しているというし、聴いてみたかったのだけれど廃盤でずっと手に入らなかった。噂ではこのアルバムを長く探しているマニアは少なくないらしい。ぼくは一度中古CD屋で「踊り子」を見つけたのだが、「は?」というような値札がついていて、手が出なかった。

 それが先日、Amazonで偶然「踊り子」を見かけた。中古かな、と思ったらさにあらず。最近、紙ジャケで復刻されたらしい。
 待てば海路の日和あり。いさんで買ったのだが、その直後に「お風呂」とのTwo in One盤(1枚のCDにアルバムが2つ収録されている)を見つけた。こっちは2枚分で「踊り子」1枚より安い。ぼくはちょっと迷ってから前の注文をキャンセルし、Two in One盤を買ったのだった。

 こう書いてみると、ぼくは別に間違えてはいない。同じ音楽を安く手に入れたのだから、何の問題もない。
 にもかかわらず、なんだか後ろめたい。
 どうしてだろう?

 ただのファンとマニアの間に違いがあるとすれば、それは曰く言い難いこだわり、パッションみたいなものの有無だ。LPでないとだめ、とか、オリジナル盤しか認めない(オリジナル盤ってなんなのかぼくにはよくわからないのだが)とか、アンプは真空管に限る、とか。それが部外者にはよくわからなくても、ぼくたちはそういうこだわりを愛するし、こだわりにこだわる人たちを(半分呆れつつも)尊敬する。この世界のどこかには神秘的な深淵みたいなものが必要なのだ。何もかもが理屈と効率で割り切れては、世の中はさぞかし退屈だろう。
 正しければよい、というわけでもないのかもしれない。

 この小粋でクールな音楽を聴きつつ、このあたりについてもう少し考えてみることにする。
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2008年09月28日

孤軍/秋吉敏子&ルー・タバキン・ビック・バンド


孤軍
KOGUN


秋吉敏子(p)
ルー・タバキン(ts,fl)


1974年録音



 旅先から戻ってきたら秋が来ていた。

 毎年同じ時期に同じ季節が巡ってくるのは不思議だ。約束している新聞配達や宅急便だってお休みしたり遅れたりすることがあるのだから、たまには夏がずっと終わらなかったり、冬の次が秋だったりすることだってありそうだが、そういうことはあまり起きない。世界はぼくが思っている以上にきちんと管理されているらしい。
 寒気が温む春先が夜明けの払暁だとすれば、この時期は黄昏の先駆けといったところだろうか。これから季節は夜に向かう。表で遊べる時間は短くなるけれど、音楽や読書にむける時間が増えるので、それはそれで楽しみだ。


 「孤軍」は季節が交錯するこの時期にふさわしいアルバムだ。盛夏の勢いと晩秋の冷涼が、あるいは西洋と東洋の音楽が、緻密に、複雑に、カラフルに絡み合って、立体感は半端でない。音でくみ上げた箱根細工のようだ。これはどうやったら開くんだろう、とためつすがめつするのも面白いし、頭を空っぽにして、ただただこのきれいな構造物を眺めているのも乙なものである。
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2008年07月19日

ライブ!(艶奏会)/カーラ・ブレイ


ライヴ!(艶奏会)
LIVE!

カーラ・ブレイ(orgほか)
ミッシェル・マントラー(tp)
スティーブ・スレイグル(asほか)
トニー・ダグラディ(ts)
ゲイリー・バレンテ(tb)
アール・マッキンタイアー(tubaほか)
スティーブ・スワロー(b)


1981年録音


 艶っぽいようなおっかないようなアルバム・ジャケットは前から気になっていたのだけれど、カーラ・ブレイはフリージャズのひとと聞いていたので二の足を踏んでいた。が、ふとビックバンドのフリージャズってどんなのだろう、サックスが10本いて好き勝手に金切り声を上げていたりするのだろうか(ぼくのフリージャズの認識はその程度)と思いついて、逆に怖いモノ見たさで買ってみた。買ってよかった。やっぱりレッテルはあまり気にするものじゃない。


 サックス10本はいなかったし、思っていたよりずっとストレートで聴きやすい音楽だったが、それはどこかでとっても「自由」なのだった。どんな道をたどってカーラ・ブレイの音楽がここに行き着いたのかぼくは知らないが、ここから先の道はきっとカーラ・ブレイが自分で地図に書き加えることになるのだろう。


 カーラ・ブレイは冗談のわかるひとに違いない。フトモモむき出しのジャケットも、「うひー」という声が聞こえてきそうなカーラの表情も、これがユーモアの一部なのだと考えると納得がいく。しかめ面して楽譜を書くひとからは、たぶんこういう音楽は生まれない。
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2008年03月15日

ストレート・アヘッド/カウント・ベイシー


ストレート・アヘッド
BASIE STRAIGHT AHEAD

カウント・ベイシー楽団

1968年録音


 以前テレビを見ていたら、西田敏行がオーケストラの真ん中に座って演奏を聴きたい、と言っているのを実現させる、という企画があった。曲は確かラヴェルのボレロだったと思うが、感動した西田敏行がボロボロ泣いているのを見て、いいなあ、と思ったのだ。
 あれ、ぼくもやってみたい。

 で、ぼくの場合はビックバンドの真ん中に座って聴きたい。特に、カウント・ベイシー楽団の真ん中に座って聴けたら、もう言うことはない。
 デューク・エリントンやベニー・グッドマンじゃイヤだ、なんて贅沢を言うつもりはさらさらないが、とりわけカウント・ベイシーなら圧巻だろう、と思うのだ。あの音の瀑布の内側に入ってももみくちゃにされてみたい。ビキニの美女軍団にもみくちゃにされるくらい楽しいだろうと思うのだ。ビキニの美女軍団にもみくちゃにされたことはないけれど。


 そうだ、ぼくがいつか大金持ちになったら、カウント・ベイシー楽団の真ん中でもみくちゃにされるのと、ビキニの美女軍団の真ん中でもみくちゃにされるのと、どっちが楽しいか試してみよう。

 人生には目的が必要である。
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2007年08月11日

ザ・ポピュラー・デューク・エリントン



ザ・ポピュラー・デューク・エリントン
The Popular Duke Ellington

デューク・エリントン(p)
キャット・アンダーソン(tp)
ジョニー・ホッジス(as)


1966年録音


 ぼくは子どもの頃にテレビで「グレンミラー物語」を見て、世の中にはこんなに愉快な音楽があるのか、とジャズに興味をもったクチなので、今でもビックバンドには思い入れが強い(もちろんグレン・ミラーも大好きだ)。
 だが、その流れでデューク・エリントンを聴いて、これはちょっと違うぞ、と思ったのだ。


 ぼくの知っていたビックバンド・ジャズは、多かれ少なかれ予定調和的な部分があった。必ずハッピーエンドで終わることがわかっているので、安心して見られる映画みたいに。
 ところがデューク・エリントンは次に何が飛び出してくるのかわからない。
 すさまじいソロも、こいつ勝手に吹いているんじゃないよな、ちゃんとつながるよな、あとでエリントンに怒られたりしないよな、となんだか心配になるのだ。

 
 で、それがエリントン楽団の楽しさのキモであることに気づくと、癖になる。
 

 1曲目の「A列車で行こう」は、デューク・エリントンのピアノ・トリオ状態で演奏が始まる。あれ、ビックバンドじゃないのか、でもこれはなかなかいいな、この人ピアニストとしても一流だな、おおなかなか凄いぞ、盛り上がって来たぞ・・・というところで波頭が崩れるようにブラスが吹き上がり、鳥肌が立つ。この瞬間が聴きたいばかりに、何度もリピートする悪い癖がついてしまった。

 
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2007年07月28日

スターダスト/ライオネル・ハンプトン


スターダスト
STARDUST

ライオネル・ハンプトン(vib)
ウィリー・スミス(as)
チャーリー・シェイバース(tp)
コーキー・コーコラン(ts)
スラム・スチュアート(b)
トミー・トッド(p)
バーニー・ケッセル(g)

1947年録音


 ジャズの神様がソフト帽を目深にかぶって、くわえ煙草でにやにやしながら降臨したとしか思えないライブ録音。ジャズの、いや音楽の楽しさのエッセンスがぎっしりつまったタイトル曲の15分は、ジャズの歴史の中でも伝説的な名演奏と言われている・・・言われているというのは無責任な言い方だな。じゃあぼくが言おう。伝説的な名演奏だ。

 アルトサックス、トランペット、テナーサックス・・・という順番にメンバーがソロを取るのだけれど、うわあこの後どうすんだよ、もう逃げるしかないぞ、という感じのソロのあとに登場する次のソロが、負けてない。圧巻は最後に登場するライオネル・ハンプトン。

 タモリが「死ぬ前に1枚だけ聴くとしたらこれ」と言ったそうだ・・・言ったそうだという言い方は無責任だな。じゃあぼくが言おう。

 死ぬ前に1枚だけ聴くとしたらこれだ。
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